Episode:14 野営
嵐鳥の攻撃を避け、歩き続ける。
何事もなく、平和な旅と、そう呼べるだろう。
空は次第に暗くなり、星が綺麗に瞬く。
そんな空を見上げシェラは小さく呟いた。
「そろそろ休憩するか……」
首の骨をコキコキと鳴らしながらシェラは腰に手を当て話す。
脚を止めたディジーもため息を漏らし、周囲を見渡す。
周りは草原……。
振り返ることなく歩き続けていたからか、いつからか王都は見えなくなっていた。
「そうしようかね」
ディジーはそう話した。
シェラは鼻を鳴らし、何か匂いを感じ取った後に雑嚢から水袋を取り出し、一口含み水を吐き出した。
「アンタ、飲み水だろう? もう少し大事に扱った方がいいんじゃないのかい?」
シェラの行動を見たディジーがそう話す。
確かに、水は貴重だ。
水分が枯渇すれば、死に直結する……黒曜級の冒険者がそれを知らないはずがない。
「大丈夫だ」
シェラはそう答えながら、水袋に栓をして雑嚢に押し込んだ。
「何が大丈夫だってんだい」
ディジーは少し呆れたように首を振りながら、地面に腰を下ろした。
そんな彼女を見つめながらシェラは自身の鼻先を人差し指でつつく。
「近くに川がある。水の匂いがするんだよ」
そう話しながらシェラは歩き出し、乾いた枝や葉を探し始めた。
「ここで野営をするんですか?」
僕がそう話すと、シェラは枝を選別し、いらないものは投げ捨てながら話す。
「あぁ……ここなら見晴らしもいい。近くに川もあるし、立地としては悪くねぇ……。てか、ディジー、オメェも働けよ」
シェラはそう話すと、ディジーはランタンに火を着けて地面に置く。
そして、ため息を漏らして口を開いた。
「アタシはバリスと戦って、魔術も扱って、魔具も開放してる。十分働いたと思うけど?」
ディジーはそう話してシェラに手を振った。
その言葉はおそらく正しく、シェラも理解していたのだろう。
彼は何も言わずに舌打ちした後、ため息を漏らしながら枝を集め始めた。
「僕も手伝います」
「おう、助かるぜ、ルイン」
僕はシェラのそばに駆け寄り、ともに枝を集め始めた。
それから暫くたった頃、ディジーの近くに戻ってきた刻には、彼女は今にも眠りにつきそうだった。
「おい、俺様たちが近くにいないときに寝んなよ。危ねぇだろうが」
シェラはそう話しながら、枝を地面に投げ捨て、僕を見つめる。
「ルイン、頼めるか?」
シェラはそう話した。
初めは何を言われているのか理解できなかったが、炎が必要だと理解すると、僕は小さく頷いて、小さく積み上げられた枝の束に右手を向ける。
「ディア・フィルト」
詠唱を終えると、小さな火球が右手から弱く放たれ、枝に火を着けた。
乾いた枝がはじける音が夜の闇に響く。
「ルイン、ディジーと先に寝ろ、俺様が見張りをする。適当に起こすから、その時は変わってくれ」
そう話すシェラ。
ディジーを見るとすでに目を瞑って夢に入っていた。
「わかりました」
僕がそう話すと、シェラは頷いて背中から一本大曲剣を地面に突き刺す。
そのそばで腕を組み始め、深呼吸をした。
見張り……冒険者は満足に休むこともできないのか……。
そんなシェラの背中を見ながら、僕はゆっくりと目を閉じた。




