Episode:13 数の暴力
炎に焼かれ、バタバタと落ちていく嵐鳥の姿を見ながら、ゆっくりと姿勢を戻す。
肉の焦げた匂いと、突風が収まったことによる熱の感覚が、皮膚を湿らせた。
「……よし」
ディジーはそう話すと、赤い魔石が埋め込まれた指輪を外し、外套の中に戻す。
「終わったか?」
シェラは息を切らしながら地面に膝をついていた。
「どうしました?」
僕がシェラに声をかけると、彼は少しムッとしながら答えた。
「蜥蜴人は熱に弱いんだよ。うまく排出が出来ない、だから水で体を湿らせたりするんだ」
シェラが舌打ちをしながらそう話すと、ディジーはため息を漏らして外套の中から水袋を取り出す。
冒険者は、皮で作られた水袋を携帯し、そこから水分を補給する。
水分は大事だ、だからこそ、彼女の行動にはシェラさえも目を見開いた。
ディジーはキュポンッと水袋の栓を引き抜き、中に入っている水をシェラの頭にぶっかけた。
「――っな!」
ディジーの行動に驚いたように、シェラは声を上げる。
「オメェ、飲み水だろそれ!」
シェラはそう叫んだ。
だが、ディジーはそんなことも気にせず最後の一滴までシェラに浴びせる。
栓を閉め外套の中にしまいながら、ディジーは周囲を見る。
「死なれたら困るからね、仲間なんだから」
ディジーは確かにそう話した。
褐樹人は排他的でよそ者を嫌う。
仲間がどうとか、どちらかといえば嫌いな部類だと思っていた……が、逆にいいのかもしれない。
排他的で、褐樹人内で知識を完結させないといけないとしたら、協力が必須となるだろう、だからこそ、誰とも関わりを持たないとしてきたからこそ、身近な人間を大切にするのかもしれない。
ディジーはため息を漏らしながら街道に目をやり、森に視線を向け、僕を睨んだ。
「暴礫、不死隊……そして、嵐鳥。どいつもこいつも数がおかしい、ルイン……アンタさ、魔物を引き寄せてるんじゃないかい?」
ディジーはそう話しながら、新しい水袋を外套から取り出して水を飲む。
ひとしきり喉を鳴らした後、栓を閉じながら話した。
「自覚はなし……ルイン本人が出したくて出してるわけじゃないみたいだね」
ディジーはそう話した。
その言葉に、暑さから復活したシェラがフラフラと揺れながらゆっくりと立ち上がる。
「確かに、数がちと多いなぁ。変な感じだ……。ルインの話を聞く限り、森の中だけだと思ったが、バリスも多いんじゃ、疑いしかねぇよな」
そう言いながらシェラは大曲剣を背中に戻し、バリスの死体を足でつついては、蹴りあげて僕を見た。
生々しい音を立て、バリスの死体が地面を転がる。
「だが、何か知ってるって感じじゃねぇもんな。俺様も、アーガスからは何も聞いてねぇし……。これから旅を続けていけばよ、いろんな魔物と戦う事になる、群れない魔物が群れるなら、ルイン……この旅を辛く厳しいものにしてるのは、オメェ自身かもな」
シェラはそう言って先に歩き出した。
僕は横に立つディジーに顔を向ける。
彼女はその視線に気がつき、目を合わせたが小さく首を振った。
そして、僕とディジーも、シェラを追うように歩き出した。




