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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第七章:死してもなお

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Episode:12 嵐の鳥2

 ――エルナ(風よ)フィルト(射出せよ)


 詠唱と共に僕の右手から放たれた風の魔術は、不可視の刃となり、空を縦横無尽に飛ぶ嵐鳥(バリス)の群れの何羽かを切り刻んだ。


 バラけた胴体から鮮血が吹き出し、血の雨が降り注ぐ。

 血生臭い香りと、生々しい水音が石畳の地面を叩いた。


「よくやった!」


 シェラがそう叫ぶ。

 血の雨が降る中、鱗が汚れることも気にせず彼は笑っていた。


 嵐の鳥、バリス。

 この魔物がそう呼ばれる所以(ゆえん)は、どこにあるのか。

 ただ飛び回るだけの大きな鳥ではないはずだ。

 その所以を知るのは、案外早かった。


 バリスの群れは、仲間が地に堕ちた光景を目の当たりにし、狂ったように鳴く。

 それは怒りか、悲劇を叫んでいるのか、言葉のわからない僕たちには到底理解できない。


「おーおー……仲間が殺されて相当ご立腹なようだぁ」


 シェラはそう話しながら眼を動かす。

 細く、鋭かった瞳孔は完全に開き切っており、戦闘を楽しむ意思が、瞳に宿っていた。

 

 直後の事だ。

 茶色い何かが、頬を掠めた。

 速すぎて見えなかった、甲高い音が足元から響き、僕は背後の地面に眼を落とす。

 そこには、しっかりと刺さっていた。

 鳥の羽だ。


「――っえ?」


 羽を認識した直後、掠めた頬がゆっくりと裂け、血が滲む。

 傷口は浅い。

 血の量は少なく、頬を伝うのにも刻を要する……だが、その刻が、今はより残酷に現れた。


「来るぞ!」


「アンタたち、盾!」


 シェラの叫び声とほぼ同時に、ディジーは銀騎士に指示を出す。

 弓を握っていた弓兵は、瞬く間に大型の盾を構え、シェラと僕、そしてディジーを囲むように盾を構えた。


 直後、嵐のように羽が飛び交う。

 嵐の鳥とは、四方から人を貫くほどの強度を誇る羽を、武器のように飛ばす事から由来している。

 まさに、嵐鳥(らんちょう)の名に相応しい。


「耐えろよ!」


 シェラがそう叫ぶ。


「どのくらいですか!」


 僕が返した言葉に、シェラは首を振ってニヤリと笑った。


「さぁなぁ!」


「アンタ達! 集中するんだよ!」


 シェラの返事に被せるように、ディジーが叫んだ。

 顕現した銀騎士の盾に、羽が突き立てられ金属音が響く。

 無数の羽音、金属音、突風。

 どう考えても、この状況を打開するのは不可能に近かった。


「ディジー! 何か策はないのか!」


「あるよ、今からするさね!」


 シェラの言葉にディジーはそう叫び、外套から赤い魔石が埋め込まれた指輪を取り出す。

 それを左手に嵌め、僕たちを見つめた。


「姿勢を低く!」


 ディジーのその言葉で、僕とシェラはしゃがみ込む。

 反対に、銀騎士は跳躍し、羽を受けに行った。

 勇敢にも、蛮勇にも見える。

 太陽の下で、銀騎士が砕け、光る粒子に変化する頃、視界を赤が染め上げた。


 ――ディア(炎よ)フルール(連鎖せよ)


 ディジーの詠唱の直後、指輪が光り輝き、激しく火を吐く。

 それは継続的に吐き出し続け、いずれ炎の体を持つ蛇のように波打ち、うねりながら群れを焼く。

 黒く焦げたバリスの群れが、鈍い音を立てながら地面に堕ちた。


 頭を少し上げ、一人立つディジーを見つめる。

 

 これが、魔具の力か……。

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