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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第七章:死してもなお

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Episode:10 街道

 砂の被った石畳の道を、僕は足音を奏でながら歩く。

 直上にある太陽が僕らを見おろし、ギラリと肌を焼いた。


「あっちぃ……」


 黒い鱗の生えた蜥蜴人(リザードマン)、シェラがそう呟いた。

 蜥蜴人だからか、熱に弱いのか。

 王都では店頭から流れる冷気などが身を包み、太陽の日差しの下でも、涼しさがあった。

 だが、森と、低い山に囲まれた街道は、遮るものがなく滞留した熱気が身を包む。


「だ、大丈夫ですか?」


 僕はシェラを見ながらそう話した。

 彼は小さく首を振り、舌を出しながらだらしなく文句を垂れている。

 黒曜銀級とは、一眼ではわからないだろう。


「にしてもよぉ〜……。ディジー! なんでオメェは汗ひとつかいてねぇんだよ!」


 シェラは怒りが爆発したように、地団駄を踏みながらディジーに叫ぶ。

 耳元で叫ぶシェラに、心底嫌そうな顔をしてディジーは一歩離れた。


 だが、シェラの話は事実だった。

 太陽の下、直射日光が当たっている。

 ディジーの銀髪は腰より長く、毛量もある。

 それに加えて、脛まではある漆黒の外套、太陽の光を、熱を吸収し、熱を籠らせる彼女の格好は、汗ひとつない状況と矛盾していた。


「うっるさいわねぇ……。暑いなら興奮するんじゃないよ、馬鹿なのかい?」


「馬鹿じゃねぇよ! 噛みちぎるぞこの野郎!」


 シェラの返答に対して、ディジーは呆れたようにため息を漏らした。

 遠い目をしているディジーを見つめ、僕もため息を漏らす。

 彼女の耳元でシェラは叫び続けるが、彼女の耳には入っていないようだった。


「でも、本当に汗をかいている様子はありませんね、なぜですか?」


 僕がそう話すと、ディジーは目を瞬かせて左手を見せてきた。


「指輪だよ」


「指輪?」


 ディジーが差し出した左手には、人差し指と中指に緑色の魔石が嵌められた指輪型の魔具がある。

 これが関係しているのか……。


「えっと、これが何を?」


「魔具のことは具体的には教えられないけどね。副作用みたいなもので、体感の温度を下げるのさ。だから、アタシは暑くないってこと」


 そう話しながら、銀色の長髪を靡かせた。


「なるほど」


 僕が頷くと、ディジーは中指から指輪をひとつ外し、僕に手渡してきた。


「身につけてな、少しはマシになるさ」


 ディジーは優しく笑いながらそう話す。

 僕は頷いて彼女の右手から指輪を受け取り、自身の左手に嵌める。


 するとどうだろうか、体の中から異様な冷たさが込み上げ、体を冷やす。

 

「すごいですね、これ」


「そうだろう? 世界には面白い魔具が溢れているんだよ」


 そう言いながらディジーは腕を広げ、少し子供っぽく笑った。

 

「うっわ、ずりぃ。ルイン、俺様にも貸してくれよ」


「えー、どうしましょうかねぇ」


 シェラと話していると、突如頭上から無数の羽音がした。

 シェラの動きが石像のようにピタリと止まり、色彩豊かな瞳だけが忙しなく動く。

 彼の鋭い瞳孔は、徐々に丸く広がり、戦闘態勢に切り替わる。


「今の……数が多くねぇか?」


「あぁ、珍しいね。群れても大した脅威にはならないけど、群れる事がない魔物だよ」


 シェラの低い呟きに、ディジーが周囲を警戒しながら話す。

 直後、羽音が大きくなり、地面に影が映った。

 鳥……とはまた違う。

 影は似ているが、何かが……。


 僕はゆっくりと視線をあげると、数十羽という数の大きな鳥が、空を舞っていた。

 鋭い爪、飛ぶ力は強く、速い。

 鷹や鷲よりも遥かに大きい、鳥の群れ。


嵐鳥(バリス)だ!」


 シェラの叫び声と共に、大きな影が動き出した。

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