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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第七章:死してもなお

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Episode:9 別れの言葉

 僕はゆっくりと立ち上がり、シェラとディジーを見つめる。


「ありがとうございます」


 そう話すと、ディジーは右手をヒラヒラと振りながらため息を漏らした。


「別に。というか、東の果てなんて何日かかるのかもわからない状態だろう? 今すぐにでも出立したほうがいいんじゃないかい?」


 ディジーは腕を組みながらそう話す。

 その言葉に、僕は頷いた。


「はい、なので、すぐにでも王都を出ます」


 僕がそう話すと、ディジーは目を見開いた。

 横にいたシェラは、慌てた様子で口を開く。


「ま、待て。友人や、家族に出立を知らせなくていいのか、心配するだろう」


 シェラはそう話した。

 アーガスの件もある。

 素性のわからない僕が、小さく呟いただけで剣を抜いたのだ、絆とか、友情や信頼は、彼に取ってはものすごく大事なものなのだろう。


「大丈夫です、前回言ったので」


 僕がそう話すと、シェラは少し考えた。

 驚いたような表情で固まっている。


「いや、でも……」


「大丈夫です……。前回、言っていますから」


 シェラの言葉に、僕は彼の目を見ながらしっかりと話す。

 僕の言葉を聞いたシェラは、悔しそうで、悲しそうな顔をした。


「行きましょう」


 僕はディジーに視線を移し、そう話す。

 彼女もまた、僕を見つめて心配そうな顔をする。


「あ、あぁ」


 ディジーの歯切れの悪い言葉。

 言葉と呼ぶのも憚れるような、弱々しい返事は、綺麗な空に消えた。


 王都の門をくぐると、門番の声が響く。


「ルイン……? どこに行くんだ」


 王都に入る際、通行証を見せたおじさんだ。


「ちょっと、外に行きます」


「実技試験だろ、サボるのか?」


 僕の言葉に、おじさんは低い声で呟く。

 シェラとディジーはため息を漏らしながら待っていた。


「大事なことがあるんです」


「冒険者二人を連れてか? それも、異種族……蜥蜴人(リザードマン)褐樹人(ダークエルフ)じゃないか」


 おじさんはそう話しながら、ため息を漏らす。

 そのため息の大部分は警戒と、落胆の意が込められていた。


「おじさんに関係ありますか」


「小さい時からお前らを見てる、心配することさえも、お前はダメだって、そう言うのか?」


 僕の言葉に、おじさんは低くそう呟いた。


「エヴァは、家族はどうする。別れの言葉はないのか」


 続けて話されたその言葉に、僕は歯を食いしばる。

 拳に力を込め、口を開いた。


「何も……。――何もし……」


 我慢の限界か。

 口から漏れ出し、紡ぎそうになった言葉は、シェラが僕の肩に手を置いたことで止められた。

 シェラの顔を見ると、彼は悲しそうな表情で首を振る。

 そして、おじさんに話しかけた。


「俺様と、こっちの褐樹人は、黒曜銀以上の冒険者だ。王都の外に、ちと用があってな。散歩みたいな感じだ。俺様達は強い、ルインの身の安全は保証する。だから、まぁ、見逃してくれねぇかな。実技試験に関してはよくわからねぇけど、大事なんだよ、すごく」


 そう話したシェラは、今までのどの場面より、優しかった。


「それを、信じろと? 小さい頃から、今まで見てきた子供達の未来を、冒険者の言葉で潰してもいいと? 黒曜級がどれだけ信頼されてるかは知っているつもりだ。俺も、昔は冒険者だった。だとしても、受け入れられない」


 おじさんがそう話すと、ディジーがシェラを押し退け前に出る。

 そして、彼女は少し声を荒げて話した。


「実技試験がどれだけ大事かは知っているさ! でも、学校では得られない経験ってのも、この世界には溢れてる……現実的じゃない、実践的じゃない魔術ばかり扱うなら、誰だって出来るさ! ここが少年にとっての分かれ道なんだ! 成長を見守っていたなら、だからこそ……ここは行かせて、さらに成長して帰って来いって言うもんなんじゃないのかい!?」


 ディジーがそう言うと、おじさんは少し唸った。

 そして、諦めたようにため息を漏らす。


「エヴァと母親には、俺から伝えておく。死んだら許さない、覚えておけ」


 おじさんはそう呟いた。

 僕は頭を下げ、王都から出る。

 森に囲まれた街道。

 

 東の果てを再度目指し、歩き出した。

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