Episode:8 別の道
乗った。確かにそう話したディジーを見つめ、僕は安堵の息を漏らす。
「助かります」
僕がそう話すと、ディジーは立ち上がる。
銀髪が太陽の光で煌めき、綺麗に映った。
「で、どうするんだい? ルインの話じゃ、森はすごく危ないんだろう? どこを通るつもりだい」
ディジーは腰に手を当て、長椅子に座っている僕を見下ろす。
紫色の瞳は、僕をしっかりと見つめ、答えを待っている。
「街道で行きます」
その言葉に、ディジーは眉を歪めながらも、ふむ。と呟いた。
「まぁ、妥当な判断だね。森は危険、後は街道しかないし、二回続けて死にに行く馬鹿じゃないってことだけはわかったよ」
ディジーはそう話しながら、眉を上げる。
そして、口を開いた。
「その、繰り返しってのは、いつ起こるんだい?」
「王都の祭り前夜、十二刻です。それと、僕は繰り返しではなく、再配置と呼んでいます」
僕がそう話すと、ディジーは指折り数え、目を見開く。
「七日後かい? 経った七日で、どこまで行くつもりだい?」
ディジーのその言葉に、シェラもこちらを向き、目を鋭くさせる。
「東の果ての山脈……その頂上に、洞窟があるらしいんです」
僕の話したその言葉に、ディジーは首を傾げ、眉を歪めた。
「らしい? 確実な情報じゃないって事かい? ルイン、君はそれを信じて、あるかわからない洞窟に向かうために必死こいてるってわけかい?」
ディジーは冷たく、そう答えた。
当たり前だ、命をかけて、実在するかわからない洞窟を求めて旅をするなんて、正気じゃない。
前回も、常に彼女は正しかった。
「それは、信用できる情報なのかい? 誰から、どこからの情報だい」
ディジーの口調は、疑問系から、まるで叱責するかのように切り替わる。
失敗すればディジーも、シェラも死ぬ。
やり直しが効くのは僕だけ、その差異を、僕は認識していなかった。
「アーガス・ティルデ……」
「誰だい?」
僕は、名前をつぶやく。
経った一人、駆け出しから黒曜金級まで駆け上がり、僕に道標を残した冒険者の名前を。
その言葉に、ディジーは眉間に皺を寄せ、腕を組むが、シェラだけは目を見開き、驚いた顔をしていた。
「僕より前に、再配置を経験した冒険者です」
「だから、それは誰なん……」
僕の言葉に、ディジーが答えようとする。
その声色には、少しの怒気が含まれていた。
その声を遮るように、シェラが自身の足を叩きながら勢いよく立ち上がる。
「わかった、ルイン。助けてやる」
シェラはそう話し、長椅子に座る人僕を見つめる。
アーガス。
この名前一つで彼は怒り、次は手を差し伸べる。
無償の信頼。
アーガス・ティルデ、彼は一体、シェラにとってどんな人物だったのだろう。
シェラがそう話した瞬間、ディジーはシェラに視線を向け、小さく舌打ちをする。
そして、僕に視線を移して静かに話した。
「必ず、説明してもらうからね。ひとまずは、信じるよ。さっきチラッと見えたが、シェラ……だっけ。アンタ、黒曜銀級だろう? そんな冒険者が即答で助けるって言うんだ、デカい問題なのは間違いないからね。ひとまずは、信じるさね」
ディジーはそう言いながら、紫色の瞳を光らせた。
雲ひとつない快晴の下、再度三人が集まった。




