表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第七章:死してもなお

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/142

Episode:7 死の記録

 隊ではなく軍。

 ディジーは確かにそう言った。

 僕はその言葉に、違和感を感じた。


 それは、シェラ、ディジーの反応だ。

 隊ではなく、軍。

 連携をしている……。

 雑魚。

 それだけでも導き出せるほどの違和感。


「待ってください、不死隊(スタッパー)は基本、どれくらいの群れを作るんですか?」


 僕がそう話すと、右側に座っていたディジーとシェラが顔を合わせ、首を傾げる。

 そして、日常を話すように軽く口を開いた。


「十体いりゃ、多い方だよな?」


「だね。戦士や魔術師なんかも出てくると、最低金等級くらいの依頼になるんじゃないかい?」


 シェラの言葉に、ディジーは頷きながら答える。

 そこで初めて、あの森の異常さに気がついた。

 二十体の銀騎士ですら押し返せないスタッパーの数。

 戦士、斥候、魔術師が入り乱れ、連携をとる姿を、隊ではなく軍と呼んだ事。

 全てが繋がり、異常さを際立たせる。


暴礫(ボルグラ)は、群れを作りますか?」


 僕は、スタッパーより先に会ったボルグラについても問う。

 拳ほどの大きさをした石が飛び交う中、シェラは適切な対応をしていたが、それと同時に焦っているようにも見えたのだ。

 あれは、予想外の事態が発生したからじゃないかと、僕は考えた。


「いや、アイツらは群れにはならないだろ。多くて五体? くらいじゃねぇかなぁ」


 うーん。と唸りながらシェラは腕を組む。

 シェラの言葉に、僕は歯を食いしばった。


 群れをなさない魔物が群れをなし、隊は軍に昇格する。

 森に入る際に見かけた魔除けの魔具。

 ディジーは強力なものだと言っていた。


 森が異常なんだ。

 あそこは初めから通っちゃいけない場所だった。

 地図よりも遥かに大きく、予想外のことが頻発する。

 あの森を通るのは避けた方がいい。


「ディジー、あなたの力を、知識を貸してくれませんか?」


 僕は紫色の瞳を見つめ、そう言った。


「ルイン……だったかい? アンタの話が本当だとして、仮に、アタシが仲間になるとして、見返りはなんだい? アタシ達冒険者は、報酬がないと動かないよ」


 ディジーはそう話した。

 彼女の肩からシェラは顔を覗かせ、眉をクイっと上げる。

 どんな意図があるかはわからなかった。


「報酬……ですか」


 僕は俯いた。

 当たり前だ、冒険者を雇うには金がいる。

 報酬がいる。

 手持ちはないし、手渡せるものもない。


「すぐに払えなくても大丈夫ですか? 将来的に払える……とか」


 僕がそう話すと、ディジーは眉間に皺を寄せ、僕を睨む。


「いつ死ぬかわからない冒険者に、後払いかい?」


 少し低くなった声で、ディジーは話す。

 当たり前だ。

 冒険者はいつ死ぬかわからない、明日かもしれないし、もっと先かもしれない。そんな彼女に、この言葉は禁句に思えた。


「すいま……」


「まぁ、否定から入るのはつまらないから、取り敢えず話してみなよ。後払いで、アンタが何を払えるのか、興味がある」


 僕の謝罪をかき消し、ディジーはニヤリと笑いながら話す。

 その笑みには、瞳には、探究心と呼べる炎が揺れている。


「そうですね……空が白くなる現象、未知の魔物とか。つまり、長年生きてる樹人(エルフ)褐樹人(ダークエルフ)鍛人(ドワーフ)蜥蜴人(リザードマン)でさえ、知り得ない、片鱗すらも知らない知識と経験を、報酬として差し出せます」


 僕がそう話すと、ディジーは目を見開き、ニヤリと笑った。

 そして、その笑いは次第に歓喜に変わる。


「っく。くっく、あはは! いいねぇ、いいじゃないか! 誰も知らない知識か、保証は出来るのかい?」


 ディジーは笑いながらそう話す。

 その言葉に、僕はしっかりと答えた。


「はい、絶対に後悔はしないかと」


 そう言い切った。


 ひとしきり笑ったディジーは呼吸を整え、僕を見つめる。

 そして、ゆっくりと口を開いた。


「いいねぇ、乗った」


 ディジーは静かにそう言って、ニヤリと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ