Episode:6 銀髪の褐樹人3
シェラに支えられてる僕の元に、銀髪を乱暴に掻きながらディジーが近寄る。
「ド素人が召喚魔術なんて使うんじゃないよ。よりにもよってヴェルーデなんて。自殺志願者かい?」
ディジーはそう言いながらしゃがみ込み、僕と目線の高さを合わせる。
「話だけでも、取り敢えず聞いてください」
僕は呼吸を整える暇もなく、ディジーに話す。
彼女はそれを見て、優しく笑って外套の中から水の入った容器を出した。
羊の胃で作られた容器は、振るたびに中から水の音がする。
「飲みなよ。落ち着いたら話をしようじゃないか」
ディジーはそう言って立ち上がる。
僕は水の入った水袋を受け取り、栓を抜いて一口含み、喉を鳴らした。
学校の敷地から出て、最寄りの長椅子に腰をかける。
「で、世界が繰り返されてるとしたら……だったかい?」
ディジーは僕から水袋を受け取り、外套にしまいながらそう話す。
「はい」
「それを信じろと?」
ディジーは冷たく、そう話した。
至極真っ当な意見だ。
初対面の人間に、世界は繰り返されていますと言われ、簡単に信じる生物は今頃冒険者を続けてはいないだろう。
「あなたは召喚魔術師で、外套の下にたくさんの魔具を所有している……。魔剣もありましたよね。名前はディジー・ミリアム。黒曜金級の冒険者です」
そう話すと、ディジーは目を見開いて驚いた表情をする。
その表情は次第に凛々しくなり、彼女はため息を漏らす。
「わかった。ひとまず信じようじゃないか。で、今アンタ達がアタシに会いに来てるってことは……繰り返しを止められなかった訳かい?」
ディジーの話に、僕は頷く。
彼女は勘がいい。
全てを話さなくても、知識に溢れた樹人や褐樹人は話が通じる。
仮説を立て、正解を導く能力に長けているのだろう。
「はい、前回……夜の森で全滅しました」
僕が話したその言葉で、場がどんよりと重くなる。
「俺様も死んだのか?」
「はい、全員です」
シェラの言葉に、僕は淡々と答える。
思い出したくない記憶だ、早く消し去りたい記憶だ。
「原因は?」
ディジーの問いかけに、僕は彼女を見つめて口を開いた。
「不死隊です」
僕がそう話すと、シェラは首を傾げ、ディジーは眉を歪めた。
彼女の尖った耳がピクっと動き、不信感を表すかのようにシェラに続いて首を傾げた。
「スタッパーなんか雑魚だろ。俺様が負けるはずねぇ」
シェラがそう話す。
ディジーはその言葉を意外にも肯定した。
「アタシもあり得ないと思う。黒曜金級のアタシがいて、スタッパーに負けるはずがない。隊として来ても、アタシは魔具も、召喚魔術の銀騎士もいるんだよ」
ディジーの話したその言葉に、僕は少し考える。
無意識のうちに拳に力が入り、眉を歪めていた。
「吐き出したいことがあるなら、今のうちに吐き出しちまえよ」
シェラは僕にそう言った。
僕はシェラの顔を見て、深呼吸をする。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「戦士、斥候、魔術師がいました。数は不明……ディジーが銀騎士を二十体ほど召喚しましたが、押し返せず、鎧を纏うスタッパーも複数いたので……奇跡の魔具、奇輝の指鎧も効果は薄かった」
僕がそう話すと、ディジーが口を開いた。
「魔術師は、どんな魔術を使ったか覚えているかい?」
「確かウィトルと、ウィルナ……。両方ともディーゼの魔術です」
その言葉に、ディジーはため息を漏らし、眉間を抑える。
「ディーゼ……中級魔術……ウィトルとウィルナなら、連携してる可能性がある……。そこまで来たら、もう隊じゃなく、軍だよ」
ディジーは眉を歪め、不快感を全面に出しながら低く呟いた。




