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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第七章:死してもなお

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Episode:5 銀髪の褐樹人2

 校舎から飛び出したシェラを追いかけ、僕は目的の人物を見つける。


「シェラ、止まって!」


 僕の声にシェラは急停止するために足を地面に打ち付けるが、蜥蜴人(リザードマン)の体躯から出る速度と力に、地面は耐えられずに砕け、抉った。


 戦闘態勢を取るディジーは、切れ長の紫色の瞳と、濡れた銀色のまつ毛を瞬かせ、眉を歪めた。

 警戒態勢を崩さないまま、ディジーは外套に手を入れている。


「アンタ達、誰だい?」


 ディジーは外套に手を入れたまま、鋭い目つきで僕たちを睨む。

 僕は息を切らしながら、シェラの前に出て、ディジーをしっかりと見つめた。


「僕はルイン、こちらはシェラ……あなたに用があるんです」


 僕がそう話すと、ディジーはシェラを一瞥し、僕に視線を戻した。


「用って?」


 ディジーはそう話した。

 彼女は疑い深い。

 初めて会った時、空が白くなる現象についてもかなり怪しんでいた。

 僕が真実を話すかどうか、出された情報は信用するに値するかどうか。


「……この世界が、もし繰り返されてると言ったら……どうですか?」


 僕はそう問いかける。

 その言葉に、ディジーは首を傾げ、ため息を漏らした。


「狂言か」


 直後、異質な魔力がディジーの全身から溢れ出る。

 失敗……その二文字が脳内を駆け巡り、僕は歯を食いしばった。


「しくじったなぁ! ルイン!」


 シェラはニヤリと笑い、背中に携えた二本の大曲剣を引き抜いた。


「どうする!?」


 シェラは僕の前まで歩き、楽しそうに叫んだ。


 ここで戦うのはまずい、傷ついた時点で今回は見送りになる!

 ディジーも、シェラも、体に傷が出来たらこれ以上の冒険は不可能だ。


 ディジーの外套が翻り、右手が露わになる。

 中指には赤い宝石が輝く指輪が嵌められている。


 魔具……。

 戦闘が始まる直前、僕は歯を食いしばり息を吸った。

 そして、口を開く。


「あなたは召喚魔術師だ! だから……だから!」


 僕は記憶を辿り、彼女が扱う魔術を脳内に思い描く。

 そして、全身に力を入れてゆっくりと唱えた。


ヴェルーデ(開門)……」


 僕がそう呟くと、視界がグラりと揺れる。

 大規模な魔力消費で、体に不具合が発生した証拠だ。

 前に倒れそうになる身体を、右足を一歩出して無理やり支える。

 歯を食いしばり、拳に力を入れ、ディジーを睨んで、更に詠唱を継続する。


「――ヴェール・エルキス(銀騎士)!」


 直後、背後の空間が歪み、銀色の直剣が姿を現す。

 まるで、先端から構築するように現れたそれは、刀身が半分ほど出たあたりで弾け飛び、顕現した刀身の半分のみが地面を打ち付け、高い音を出した。


「――っな!」


「ルイン!」


 ディジーの驚愕の声と、崩れ落ちる僕を見たシェラの声が混ざる。

 僕は校舎前の石畳の地面に手を付き、息を切らす。


 鼻先に温かい感触が伝い、赤い雫が地面を打った。


「――っ。なんだこれ……なんだよこれ」


 ディジーは、銀騎士を二十体以上召喚していた。

 だが、僕には直剣一本さえも満足に顕現させることが出来なかったのだ。


 胃から込み上げてくる熱いものを地面に吐き出し、僕は袖で口元を拭いながらディジーを睨む。


「大丈夫か、ルイン!」


 シェラのそんな声も耳には入らず、僕はただ、ディジーを睨みながら口を開く。


「せめて……話だけでも聞いてください」


 そう話すと、ディジーは驚いた顔をしながらも戦闘態勢を解き、ため息を漏らしながら銀髪を乱暴に左手で掻いた。

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