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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第七章:死してもなお

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Episode:3 蜥蜴人の逆鱗

 校舎にはいり、初めてシェラと会った廊下に向かう。

 老婆と話し込んでいたためか、出遅れ、すでに獣人(アニマ)褐樹人(ダークエルフ)の喧嘩が始まり、鎮静化のために、黒い鱗を生やした蜥蜴人(リザードマン)が人混みを掻き分けていた。


「少し遅かったか!?」


 人混みに入って行くシェラを見つめ、僕は歯を食いしばる。

 ディジーと会ったのはシェラの前だ……。

 この時点でディジーは校内にいないのか!?


 周囲に目を凝らすが、銀髪の褐樹人など見当たらない。

 遅かったか……。


 ディジーを探していると、目の前に影が現れる。

 僕が視線をそちらに向けると、シェラが僕を見下ろすように立っていた。


「あんちゃん、廊下の真ん中にいたら邪魔だぞ」


 シェラはそう言いながら、僕の肩に手を乗せ、押し退ける。

 シェラが僕の前を通る瞬間、僕は小さく呟いた。


岩人形(ゴーレム)……」


「あぁ?」


 僕の言葉に、シェラは足を止め、僕を睨む。

 直後、大気が揺れ、生徒の叫び声が響いた。


「魔術が失敗したぞ!」


「岩人形だ! 先生呼んで!」


 生徒の声が響くと、シェラはニタリと笑い、鼻をヒクつかせた。


「あっちの方が面白そうだぁ」


 そう言って、シェラは僕から視線を外し、一歩踏み出した。

 逃すわけには行かない。

 そして、僕はあの日、シェラが一番取り乱した言葉……名前を呟く。


「――アーガス・ティルデ」


 その名を口にした瞬間だった。

 黒い何かが僕の視界を一瞬にして横切り、次の瞬間には僕の背中は壁に打ち付けられていた。


「――っは!」


 肺から無理やり空気が出され、僕は宙に浮いたまま足で地面を探す。


 視界に映ったのは、僕の首を強く締める黒く大きな腕と、振り上げられた大曲剣。

 そして、限界まで見開かれた色彩豊かな眼球だった。

 鋭く尖った瞳孔は徐々に開き、円形になる。

 怒りを表しているようだった。


「おい、あんちゃん。その名前、どこのどいつから聞いた?」


 ドスの聞いた低く重い声が廊下に響く、天井スレスレまで伸びた大曲剣の切っ先、異常な事態に、場は騒然としていた。

 

「返答次第じゃ、この場で首を落とすぞ」


 シェラはそう話した。


 僕は、シェラの腕を掴み、答える。


「空が……白くなる……現象を……見たことはあ……りますか」


 僕がそう話すと、シェラの力が徐々に弱まり、僕は床に崩れ落ちる。

 咳き込みながらも、霞む視界でシェラを見上げ、言葉を繋げた。


「僕はルイン、あなたはシェラ。アーガスはあなたの友人で、すでに死んでいる……。自殺だったはずだ。彼は再配置を経験している……今は、僕が再配置の中心にいるんです」


 僕がそう話すと、シェラは僕の身体を掴み無理やり立たせた。


「あなたは黒曜銀級の冒険者……。でも、黒曜金級の等級章も持っているはずです」


 僕の言葉に、シェラは深呼吸をして、僕を見つめた。


「悪かったな。えっと……ルイン? 今何回目だ?」


 そう話したシェラの顔は、異常なまでに真剣で、しっかりと今を捉えていた。

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