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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第七章:死してもなお

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Episode:2 問答

 人混みに目を凝らし、ある人物を待った。

 エヴァは先に姿を消した。

 いや、学校に行ったのだ。

 ここから先は僕の問題、彼女を巻き込むわけにはいかなかった。


 人混みの中に、見覚えのある人物が見えた。

 僕は深呼吸をして、歩き出す。

 接触をするためだ。


 その人物は、人混みの中でも、誰にも接触せずに動いていた。

 異常なまでの人の数、多種多様な種族が入り混じり、体格さえも千差万別のこの場所で、誰にも触れずに人混みを抜けるのは至難の業だ。


 その人物が人混みを抜けた頃、僕は目の前に立ち口を開く。


「こんにちは。何回目ですかね」


 僕が声をかけたのは、目を布で覆い、杖をついた老婆だった。

 白い髪は胸まで下がり、姿勢すらも少し曲がっている。

 だが、異様で異質な気配だけは、消せてはいなかった。


「ルイン……かい?」


「僕以外に誰がいると?」


 僕がそう答えると、老婆の口元は不敵に笑った。


「申し訳ないねぇ……」


 老婆は優しくそう呟いた。

 その謝罪に、僕は歯を食いしばり、老婆を睨む。


「一度……死にました。何か知ってるなら教えてください」


 僕のその言葉に、老婆の口が震える。


「そうかい……本当に申し訳ないことをした……」


 老婆は申し訳なさそうに、声を振るわせながら謝罪を行う。

 その姿に、僕は舌打ちをして、口を開く。


「東の果ての洞窟に、魔物がいると聞きました。知っていますか? 前回、再配置に巻き込まれた人物は、その魔物を追っていたようなんです」


 僕の話に、老婆は首を傾げた。


「前回の人物は、たくさん犯罪を犯して、結局殺されたさね」


 老婆は確かにそう話した。

 その言葉に、僕は首を傾げる。

 なんだ、何かがおかしい。


「待ってください。アーガスは、僕の前の人ですよね?」


 僕がそう話すと、老婆は頷き、口を開く。


「あぁ、間違ってないよ。アーガスは……えっと、どのくらい前かの?」


 老婆は額を掻きながらそう答えた。

 そこで、僕は気づいた。

 だが、それを信じたくない気持ちが交差し、僕は震える声で問いかけた。


「どのくらいって、期間の話ですか……? それとも、人数……?」


「もちろん、人数さね」


 ドクンッ


 その言葉を聞いた瞬間、心臓が強く脈打つ。

 アーガスが最初じゃない、きっとその前にも、その後にもいたんだ……!


「なんで、再配置が起こるんですか!?」


 僕は叫び、老婆に問いかける。

 老婆は驚いたように体を跳ねさせたが、すぐに首を振った。


「まだ、言えないんじゃ」


「僕は一度死んだ! 知る権利があるはずです!」


 その怒鳴り声に、周囲の人間が視線を向ける。

 僕はそれに気づき、出かかった言葉を飲み込んで話した。


「なぜ、教えられないんですか」


「今教えてしまえば、ルイン……君の足を止めてしまう。未来を目指す君の足を、止めたくないのだよ。君の心を、折りたくないのだよ」


 老婆はそう言って、俯いてしまう。


「それに……」


 老婆は続けて口を開いた。


「私も、記憶保持の権利を、今は持ち合わせていないんだ」


 そう話した老婆は、少し悲しそうで、悔しそうだった。


 この人も、再配置を経験してる。

 アーガスを知っていると言うことは、アーガスより前に再配置の中心にいた人間なんだ……。


「まだ、まだ話せないんじゃ。もう、いいかの」


 そう言って、老婆は杖をつきながら僕の横を通り過ぎる。

 僕は振り返り、老婆に声をかける。


「終わりは、どこなんですか!?」


 人混みの中に老婆の姿は消えていた。

 雑踏の中、老婆の声が響く


 ――残りは七日。頼む……私たちを……愚かな私たちを殺してくれないか。もう、夢は見飽きたんだ。


「何……言って……」


 聞こえた声に、僕はそう呟く。

 何もわからない。

 何も得られない。


 僕は拳を握り、ギリッと歯を鳴らした。

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