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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第六章:見たことない景色

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Episode:10 不死隊

 シェラは目を激しく動かしながら情報を取り入れる。


「なんだこの数、なんなんだこの量は!」


 シェラの怒号にも似た叫び声と共に、不死隊(スタッパー)の軍が動き出す。

 

「来ます!」


 僕が叫ぶと、横でディジーが魔具の詠唱を行う。


 ――奇輝の指鎧(きき しがい)


 直後、指鎧を纏った右手から無数の光が発せられ、森に蔓延るスタッパーを焼く。

 だが、効果は弱く、鎧に身を包んだスタッパーに関しては、効果なしと言ってもいいほど、変化はなかった。


「鎧が邪魔!」


 ディジーはそう叫んだ瞬間、息を吸って肺を膨らます。

 そして口を開いた。


ヴェルーデ(開門)……」


 ディジーがそう呟いた瞬間、彼女の背後の空間が歪む。

 先ほどの召喚とはまた違う、異様な感じがした。


 ガシャンッ


 歪んだ空間から、銀色の鎧を纏った脚が現れる。


ヴェール・エルキス(銀騎士)

 

 先ほどの魔術とは明らかに違う、あの時は一体を異界からこちらに召喚した……。

 これは、異界から直接道をつなげ、軍を呼び寄せたんだ。


 寸分違わぬ鎧の音。

 行軍するかのように、まるで楽器を奏でるかのように揃った足音が異様さを際立たせる。


 異界から現れた銀騎士たちは、二十体ほど。

 戦旗を持ち、剣を持ち、盾を持ち、槍を持ち、両手に剣を持つ騎士もいる。

 大槌を担いでいる個体も見受けられた。

 勝てるだろうか。

 この数なら。


「やれ!」


 ディジーの命令と共に、銀騎士が動き出す。

 奇跡で苦しむスタッパーを両断し、鎧を砕く。


 鎧が擦れ、火花が散り、血肉が舞う。

 腐敗した肉と、血の匂いは、胃の中をかき混ぜ、吐き出させてしまうほど神経に響く悪臭だった。


「ルイン! 貫通!」


 ディジーの叫びと共に、僕は右手を前に出す。

 おそらく、狙っているのはスタッパーの命じゃなく鎧を溶かすこと。

 刻がない今は、一体でも早く切り倒したいはずだ。


「狙いは!?」


「どれでもいい、ルインに合わせるさ!」


 ディジーの指示を汲み、詠唱を始める。


ディア(炎よ)リカール(貫通せよ)!」


 右手に鋭い炎が形成され、木々の間をすり抜けて標的に命中する。

 鎧を焼き、溶かすまでの熱はない。

 だが、薄くすること自体はできるはずなのだ。


「馬鹿、ルイン! 上だ!」


 シェラの声で僕は空を見上げる。

 視界に飛び込んできたのは、短刀を握るスタッパーだった。


「――っ!」


 振り下ろされた短刀を回避し、次の一手に目を凝らす。

 木を伝いここまできたのか。

 斥候はどこまでできるのか。

 頭の中でスタッパーの力量を測るかのように情報が繋がっていく。


 バキバキッ


 眼前のスタッパーから骨の砕ける音が響き、僕は目を見開く。

 なんだ、何が起きて……。


 直後、スタッパーの腕が切断され、一人でに跳躍した。

 

「――しまっ」


 短刀を握る腕を回避するために身を逸らす。

 本体から腕に視線を移し、地面に落ちる腕を確認。

 直後、本体に視線を移した時、眼前には大きく広がった口が映った。


ディア(炎よ)・フィ……」


 ダメだ、詠唱が間に合わない!


 瞬間、スタッパーの頭を銀色の何かが叩いた。


「ルイン! 集中!」


 僕を助けたのは、ディジーの銀騎士。

 スタッパーを殴り飛ばしたのは、銀騎士が持つ大槌だった。


 スタッパーの身体は激しく飛び、衝撃で四肢が千切れ、木に激突する。

 それでも、下半身のない胴体だけが地を這って動いていた。


「銀騎士で時間を稼ぐ! 退く道を作ることだけ考えるんだ!」


「んなこたわかってる!」


 ディジーの命令と、シェラの叫び声が暗い森に響く。

 混沌としたこの場所では、誰の指示も、確実性を持たなかった。

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