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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第六章:見たことない景色

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Episode:8 不死の軍

 土の中から現れたのは、爛れた皮膚を持つ魔物不死隊(スタッパー)だった。


「……動く、死体ですか!?」


 僕はそう叫ぶ。

 魔力は残っている、むしろ漲っている。

 だが、疲労で魔力操作がうまく行かないかもしれない、微調整はできない。


「クソ……スタッパーか……」


 シェラが牙を剥き、僕たちを囲むスタッパーに視線を巡らせる。

 数もそうだが、ここまで焦ったシェラを見るのも初めてだった。


「ディジー! 何か打開策はないのか!」


 シェラが叫ぶと、ディジーは外套の中に視線を落とす。

 滑り込ませた腕は、何かを探しているようにも、戸惑っているようにも見えた。


 ディジーの顔を見て、シェラは舌打ちをする。

 

「シェラ! 戦いますか!?」


 僕がそう話すと、シェラは両手に握った大曲剣を握り直す。

 シェラは何かを迷っているようにも見えた。


「シェラ、魔術を使います!」


「馬鹿野郎! 魔術なんか意味ないんだよ!」


 僕の言葉に、シェラは叫んだ。

 魔術が意味ない。

 確かにそう話した。


「スタッパーに対しては、奇跡以外の攻撃は効かない! 魔術も、物理も意味がないんだよ! 足を切断して時間を稼ぐ!」


 そう話して、シェラは飛び出す。

 大曲剣の切っ先で地面を擦り、切り上げるように土を巻き上げる。

 肉を裂き、骨を砕く音が森に響き、腐った血肉が木々にこびりつく。


 切断された四肢は単体でも動き、転がる頭は目を回して標的を探す。


「死なない……!」


 僕はそう叫んだ。

 その声は森に響き、恐怖を際立たせる。


「奇跡はないのか!」


 シェラが叫ぶ。

 奇跡。

 僕の読んだ魔術図書には、そんな魔術はなかった。

 奇跡という固有の能力か、はたまた魔術ではないのか。


「ディジィィィィィー!」


 返り血を浴び、赤く染まった身体が振り向き、怒号にも似た声は森に響き、大気を震わせた。


「――っ! あぁ、今使うさね!」


 ディジーが外套の中からを指鎧(しがい)を嵌めた右手を出す。

 指一本一本を包み込むように、まるで指に鎧を纏わせたような魔具は、先が尖り、奇跡とは程遠い見た目をしていた。

 金色に光る指鎧の魔具、その光は木々の隙間から差し込み、森を明るく照らした。


 ――奇輝の指鎧(きき しがい)


 ディジーが呟いた瞬間、無数の光の刃がスタッパーを焼く。

 

 悲痛な唸り声が森全体に響いた瞬間、シェラは振り返り、僕の元に走り出した。

 彼は大曲剣を背中に担ぎ、僕の体を持ち上げる。

 そのまま勢いを殺さず方向を変え、ディジーに走り出し、彼女も抱えた。


「逃げるぞ! 舌噛むなよ!」


 シェラはそのまま腰を落とし、土煙を巻き上げながら速度を上げた。


「シェラ、倒さないんですか!?」


 僕の声に、シェラは走りながら答える。


「スタッパーはただの魔物じゃねぇんだ!」


 そう話しながら走るシェラは、足を止めずに木々の隙間を警戒する。

 鋭い瞳孔は徐々に開き、シェラは舌打ちを漏らした。

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