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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第六章:見たことない景色

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Episode:7 足止め

 暴礫(ボルグラ)の群れが炎上し、悲鳴を上げながら倒れ、次第に枯れていく。

 息を切らしながらも、魔術を操り、一体ずつ確実に仕留めていった。


「やるじゃないかい、ルイン。あれだけの魔術を打って、魔力切れにならないのは、かなりの才を持ってるね」


 左からディジーの声が響く、目の前のボルグラの群れには、銀騎士とシェラが張り付いていた。

 魔力切れ……。

 召喚魔術を常に操り続けるディジーは、半永久的に魔力を消費し続けている。

 その状態を長く保っている彼女は、黒曜金級に相応しい冒険者なのだろう。


「ありがとうございます」


 僕はそう呟いて、詠唱を始める。


ディア(炎よ)フィルト(射出せよ)


 生み出された火球はボルグラの一体を焼き、連鎖的に燃え移る。

 そして、動きが鈍くなった彼女たちを、銀騎士とシェラが切り倒した。


 息も絶え絶えになった頃、群れの全滅を確認する。


「うっし」


 シェラがそう話しながら、右手に握った大曲剣を肩に担いだ。

 息切れひとつない。

 大きな体躯に、重い一撃……。

 あれだけ巨大な大曲剣を振り回してもなお、疲労の色は一切見えなかった。


「なかなかいい筋だぜ、ルイン」


 僕はその言葉に小さく頷き、ディジーを見る。

 彼女は銀騎士に何かを話すと、銀騎士は粒子となって風に流れた。

 木々の隙間を通り、キラキラと光る魔力の粒が漂い、空に消えていく。

 幻想的なその光景は、殺伐とした世界には似合わないほど、美しかった。


「進むよ」


 銀騎士の帰還を見送った後、ディジーはすぐに口を開く。

 眉間に皺を寄せ、緊急性すら漂わせた。


「夜になるとヤベェからな」


 シェラは僕の近くに刺してあった大曲剣を引き抜き、背中に携える。

 これで、シェラの背中には二本の大曲剣が携えられていた。


「走るのは無理か……ルインは疲労してる。魔力の扱いも、連発も初だ」


「担ぐのはいけるかい?」


「できなくはねぇが……」


 シェラとディジーの会話を、僕は二人の顔色を伺いながら聞く。

 肯定的な意見を言ったシェラだったが、木々の隙間から見える空を見上げ、色が変わっているのを確認してからため息を漏らした。


「全体像の見えない森で、夜が近い。ルインを担いで走ったとして、俺様たちまで疲労で動けなくなるのは、一番避けたいことだ。無理せず、ゆったりと進める場所まで行き、野営。これが現状の最善策だと俺様は思うが、どうだ?」


 シェラがそう話すと、ディジーがシェラを見て、視線を僕に移したあと、額を掻きながら考え始める。

 結論が出るのは、案外早いものだった。


「だね……。今夜は野営にしようか」


 ディジーはそう話し、先に歩き出した。

 どこか不満気な雰囲気を纏っているが、納得したのだろうか。


 夜が近くなり、森の中まで光が届かなくなる。

 月明かりはあまりにも心許無く、視界の悪い森はすでに闇に包まれていた。


「この辺りで野営にしようぜ」


 シェラがそう話すと、ディジーは振り返った。


「ここは視界が悪い。せめて、もう少し開けた場所にしたいね」


 ディジーは短くそう答え、先に歩き出した。


「開けた場所がいつあるかなんてわからないだろ」


「でも、開けた場所の方が休まるでしょう? ルインの体調や、警戒することを考えると、こんな場所……」


 シェラの言葉に、ディジーは反論する。

 その言葉は、静かな森にはやけに響いた気がした。


 ザッ


 直後、周囲の土が盛り上がる。

 次第に姿を現したのは、肉が裂け、骨が露出した腕だった。

 腐敗臭が漂い、土の中から爛れた皮膚を持つ人型の魔物が姿を現した。


 闇の中に溶け、数はわからない。

 だが、狼にも似た低い唸り声は、無数に響いていた。


「これは……」


 僕は声を漏らす。

 

「ほら、来ちまった。一番嫌なやつだ」


 シェラはそう話しながら、大曲剣を二本もつ。


不死隊(スタッパー)……。アタシのせいじゃないからね」


 ディジーはそう呟きながら、外套の下に手を入れる。

 魔具を取り出すためだろう。


 視界の悪い森の中、僕たちを囲むように死にきれなかった不死達が姿を現す。

 無数の唸り声は、冒険には安寧など無いかのように、ただ響き続けていた。

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