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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第六章:見たことない景色

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Episode:4 戦者

 草原を歩く。

 柔らかい風と、眩しい太陽。

 散歩……だったらどれほど良いことか。


「森を抜ける必要があるかもね……」


 ディジーが遠くに見える森を指差し、僕を見つめる。


「森……ですか?」


 ディジーの言葉に僕は首を傾げた。

 僕の歳は十五。

 それだけの間、家と王都間でしか移動したことがない、少し歩いたとこに森があるなど、知識として持っていなかった。


「なんだ、知らなかったのかい?」


 ディジーは呆れたようにそう話し、銀髪を揺らしながら森に目を向ける。

 切長のまつ毛、濡れた紫色の瞳は森を奥まで見つめているようだった。


 直後、背後から舌打ちが聞こえる。

 振り返ると、シェラが頭を掻きながら歩いていた。


「森ねぇ……? 初手から森かぁ……クソッたれ」


 シェラはそう言いながら、首の骨をコキコキと鳴らし、森を睨んだ。


 警戒……。

 二人の体からはそんな雰囲気が漂っている。


 黒曜金級のディジーと、黒曜銀級のシェラ。

 最高等級と、最高等級に限りなく近い冒険者が、ここまで警戒している理由が分からなかった。


「森は……そんなに大変なんですか?」


 僕の言葉に、シェラはこちらを睨む。


「大変なんてもんじゃねぇよ。死角は大量にある……常に警戒して、襲われたら倒す。基本的には、こっちが奇襲を仕掛けるなんて不可能な立地だ」


 シェラはそう言いながらため息を漏らす。


「……なるべく早く通り抜けるしかないね」


 前から声が響き、僕は視線を向ける。

 そこには、空を見上げるディジーの姿があった。


「夜になれば、大変よ。相手によっちゃ、不利になるんだよ」


 ディジーはそう言いながら僕を横目で見た。

 その言葉に僕は森を見つめる。


 そんなに危険なのだろうか。

 冒険者ではない僕は、まだ何も知らなかった。


「取り敢えず進むぞ、早くしないと」


 シェラはそう言って歩みを進める。

 それに合わせるようにディジーも歩き出した。


「……え、まってください!」


 僕はそう叫び、彼らを追いかける。

 足並みを揃え、必死に食らいつくと、森は次第に近くなり、視界は木と葉に覆い尽くされた。


「距離は?」


 シェラが低く呟いた。

 その声にディジーは首を振る。


「分からないね」


 そう話すディジーは視線を巡らし、木に嵌め込むように置かれたひし形で青色をした道具に目を向ける。


「魔物避けの魔具……かなり強力だね……」


 そう言いながらディジーは王都がある方に視線を向け、森に戻す。


「強力な魔物避けの魔具か……クソカスが……」


 シェラがそう言いながら牙を剥く。


「な、何の話を……」


 僕がそう呟くと、ディジーが口を開く。


「強力な魔物避けの魔具……おそらくこれを設置したのは王都でしょう……。そうなると、かなり強力な魔物が以前迫って、突き抜けてきたから魔具を強力なものに変えた可能性が高いんだよ……だから」


「森の中は強ぇ魔物がいる」


 ディジーの言葉に続くように、シェラがそう唸った。

 その言葉には重圧と鋭さが現れている。


 シェラは背中に携えた大曲剣を右手で取り、切っ先を地面につける。


「ディジー……突っ走るか?」


 シェラはそう話しながら、森を睨む。

 刻はもう少しで昼。

 太陽は頭の上まで移動してきていた。


「駆け抜けるよ! ルイン、遅れんじゃないよ!」


 ディジーはそう叫びながら森の中に入る。

 魔具の境界を通る瞬間、フィーンと、まるで金属を叩いたかのような甲高い音が耳を刺し、足を止めそうになる。


 僕は片目を瞑り、片耳を塞ぎながらも先を走る二人についていこうと前を向く。

 巻き上げる土が木を打ち、三人の足音が森の中に響いた。

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