Episode:3 足並み
拳を握り締め、僕は王都の門前に立つ。
まだ朝だ、こんな時間に店などやっているのだろうか。
「早く来すぎた」
僕はそう呟きながら太陽に照らされ始めた空を見上げる。
かなり早かったかもしれない。
待ち合わせでは昼前だったが……。
「どうしよう」
僕がそう言って視線を空から前に移すと、どこからか声が響く。
「ルイン!」
その声が響き、僕はそちらに視線を向ける。
向けた先にいたのは、黒い鱗を生やした蜥蜴人と、欠伸をしながら銀髪を揺らす褐樹人だった。
「シェラ! ディジー!」
僕が名前を呼ぶと、シェラはまるで子供のように手を大きく振り小走りになる。
ディジーはそんなシェラを呆れたように見つめ、ため息を漏らしながら小さく手を振った。
「早いな」
「そちらも、集合は昼前だったはずです。なぜ?」
シェラの言葉に、僕はそう答えた。
僕の言葉を聞いて、シェラは親指を立てディジーを指差す。
「こいつが言ったんだ」
シェラの言葉に僕はディジーを見つめ首を傾げる。
ディジーは優雅に歩きながら腕を組み、近づいてきた。
「刻を気にする人間は、前もって行動するからね。ルイン、アンタの性格上、早くくるんじゃないかなと思っただけ。まさか、こんなに早いとは予想外だけどね」
ディジーはそう言いながら片目を閉じる。
なるほど。
まだ会って数日なのに、そこまで見透かされていたのか。
「てなわけで、俺様も来たわけだ」
「なるほど」
シェラの言葉に僕がそう答えると、シェラは荷物を下ろして何かを取り出す。
「そうだそうだ……。ルインに買ってきたんだよ。安物だが……」
そう言いながら、シェラは何かを僕に投げ渡し、僕はそれを見つめる。
「……剣?」
「安物だが、出来はいい」
僕は自身が持つ直剣に目を落とす。
シェラからしたら初めての譲渡品だろう……だが、僕にとっては三回目だ。
「ありがとうございます。大切にします」
「おう」
シェラは短くそう答え、僕を見つめた。
「じゃ……行くか」
シェラはそう言って荷物を背負い、僕を見下ろして優しく笑って見せた。
彼も、アーガスの事を知りたくて仕方がないはずだ。
それでも、僕に足並みを揃えようと待ってくれている。
「ありがとうございます」
「ん? おう!」
きっと伝わっていないのだろう。
突然お礼を言われた……くらいにしか思っていない……。
なら、再配置を解決したらしっかりと言おうじゃないか。
伝えてないことが、たくさんあるんだ。
僕はそう思いながら、一歩を踏み出した。
王都から出て、少し歩く。
「こっちで合ってますか?」
「そうだね、間違いないよ」
僕の言葉に、ディジーが地図を見ながら答えた。
彼女は地図を雑嚢に押し込み、歩き出した。
視界には草原、振り返れば王都が小さくなっていた。
そこで、初めて実感した。
もう……いや、やっと動き出したのだと。
僕たちは同じ方向を見据え、歩き出す。
これが、物語の始まりだ。




