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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第五章:情報

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Episode:9 導きの書

 開かれた絵本に僕は目を落とす。

 勇者になれなかった、勇者の話だ。


 ――勇者の一人旅


 彼は、身軽な装備を着た銅等級の冒険者。

 剣士でもなく、魔術師にも見えません。

 斥候でもないのでしょう。


 彼は依頼を受け、小鬼(ゴブリン)を倒します。

 剣で切りつけ、退治をして、村の人を守ります。


「あと、どのくらいだ」


 彼は呟いて、歩き出しました。

 そんな日々を、毎日繰り返していましたが、彼はこの生活に満足していました。

 お金がない訳ではありません、ですが多くもなかったはずです。

 それでも、幸せでした。


 幸せを感じていたからこそ、訪れた災害に、彼は動けなくなってしまいました。

 

 何日か経つと、空が白く染まりました。

 星空が白くなって、世界を包みます。

 彼はすごく眠くなり、目を閉じます。

 朝を迎えて、目を開けると知っている日々が目の前に広がっていました。


 同じ会話を繰り返し、日々が流れていきます。

 みんな、きっと忘れてしまったのでしょう。

 彼は泣きました。

 世界中のみんなが、僕を忘れてしまったのと、そう感じました。


 それから何日か経つと、また空が白く染まりました。

 同じこと起きると、彼は分かっていました。

 そこで、彼は心に決めました。


「世界を救うんだ」


 彼は、眠気に抗いながらそう叫び、最後には眠ってしまいます。

 

 目が覚めた時、やっぱり知っているあの日に戻っていました。

 でも、悲しくありませんでした。

 もう彼は、迷いません。


 冒険者の彼は、ありとあらゆる方法を使って、知ってる人がいないか聞き込みをします。

 ですが、知ってるよ、そう言ってくれる人はいませんでした。


 何回も繰り返し、何回も旅をして、彼はやっと見つけました。

 東の果て、山の頂上に隠すように洞窟がありました。

 人が簡単に入れます。

 まるで大きな何かが眠っている巣穴のようです。


 持っている松明に火をつけ、ゆっくりと入ります。

 奥で見つけたのは、人より遥かに大きい、まるでお家のような身体の大きさを持つ、魔物でした。

 四足で歩き、背中からは数えきれないほどの紐が沢山出ています。


「なんだ、これ」


 彼は呟きました。

 そうして、腰に付けた剣を抜きます。

 そのあとすぐに、魔物の体からすごく熱い風が吹きました。

 彼の付けていた軽い鎧からは火が出て、彼を包み込みます。

 

 そして、彼は地面に倒れました。


 目を覚ますと、また最初の日です。

 誰も、彼の話を信じてくれませんでした。

 一人で歩いてきた彼は、知識を沢山得ました。

 図書館では本をいっぱい読み、魔術師の勉強をしました。


 いつしか、彼は銅級から、黒曜金級まであがりました。

 たった数日でここまで強くなった冒険者はいません。

 彼は有名人です。

 ですが、それでも彼は辛そうでした。

 有名になった彼の話でも、誰も信じてくれませんでした。


 重い鎧を着て、魔物に会いにいきます。

 すごく強くなった彼でしたが、鎧は簡単に溶けて、また倒れてしまいました。

 それを、何回も繰り返しました。


 でも、ある時です。

 魔物が、彼の目を見て話しました。


「ごめんなさい……ごめんなさい」


 魔物は彼を見て、沢山謝りました。

 初めは話せなかったはずです、いつから話せたのでしょうか。


「なんだよ、それ」


 彼は言いました。

 そのあとすぐ、すごく熱い風が吹き、鎧を溶かします。

 涙を流すはずのない魔物が、彼には泣いているように見えました。


 彼は、どうすれば良かったのでしょうか?

 間違っていたんでしょうか?

 それから、彼は彼自身を退治するようになりました。

 何かを求めるように、黒曜金級の証を手に入れ、黒い鱗が生えたカッコいい竜の人に声をかけます。


 そして、村に帰って椅子に座り、剣を抜いて、自分を退治するのです。

 世界を諦めてしまった悪者に。

 勇者になれなかった冒険者を、彼は退治しました。



 ――ルイン


 絵本を読み、ため息を漏らす。

 東の果て……。


 最後の紙をめくると、小さく震える文字で何か書いてある。

 僕はそれに目を凝らし、しっかりと読んだ。


 ――()()()()()()()()


 ただその一言だ。

 あぁ、分かった、分かったよ。

 ちゃんと、受け取った。

 だから、休んでくれ。


 僕は絵本を閉じ、表紙を撫でた。

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