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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第五章:情報

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Episode:7 どこにもない情報

 僕は本をめくる。

 読み終わっては、一冊取り、ため息を漏らしながらも目を動かす。

 一千冊を超えている。

 そのはずだ、精神が擦り切れ、先の見えない結果に焦りを覚える。


 ディジーは銀髪を揺らしながらウトウトと舟を漕いでいる。

 休みなしの情報収集。

 ここまで来ると、諦めてしまえと声が聞こえる。


 僕は舌打ちをして、深いため息を漏らした。


「シェラ、情報屋からは何も引き出せなかったんですよね?」


「あぁ? あぁ、何も出てきやしなかったな」


 そう尋ねる僕に、シェラは答えた。


「一応、詳細を聞いてもいいですか? 情報屋の名前が出たのも、こうして何人かで情報を集めるのはこれが初めてなんです。些細なものでも、手掛かりになるかもしれません。本を漁るのは疲れました……。休憩がてら、聞かせてください」


 僕の言葉に、シェラはこちらに視線を移す。


「役に立つかはわからないぞ?」


「言ったでしょう……休憩がてらです」


 僕がそう話すと、色彩豊かな瞳が、ディジーを見つめる。

 本を持ったまま目を閉じるディジーを見つめ、シェラは優しく笑って、僕に視線を移した。


「そうだな……じゃあ」


 そう言って、シェラは口を開いた。



 ――シェラ


 俺は扉を開け、屋上に出る。

 太陽の光に目を細め、視界が晴れた時、知っている人物が既に立っていた。


「ディジー……」


 俺の視界に始めに飛び込んできたのは、褐色の肌に銀色の長髪が映える褐樹人(ダークエルフ)だった。


「何してんだ、こんなとこで」


 俺の質問に、ディジーは腕を組み、ため息を漏らした。


「アンタも、情報屋の話を聞きにきたんだろ?」


 ディジーはまるで何でも知っているかのように話した。

 自信たっぷりな表情が、余計に頭にくる。


 十数人いる情報屋。

 多種多様な種族、情報屋同士でも情報を交換して効率を上げるのだろうか。


 ディジーの目の前にいるのは、軽装で革鎧に繋がる頭巾を被った獣人(アニマ)だった。

 腰あたりから出る金色の毛並みをした尻尾は、左右に緩やかに揺れ、余裕を表しているように見える。


「俺様は別の奴に聞く」


 俺はディジーに負けた気になり、他の情報屋から聞き出そうと一歩踏み出した。


 直後、ディジーが口を開いた。


「もう聞いた。全員だ。アタシの前にいるのが最後さね」


 ディジーはそう言った。

 背中から刺さるその言葉に、俺は歯を食いしばり、拳を握る。

 クッソ……。


 振り返り、ディジーの横に並ぶ。

 そして、自身よりはるかに小さい獣人を見下ろした。


「旦那、そんな怖い顔しないでくださいよぉ。ウチらは、仲間じゃないですか」


「あぁ、仲間だな。おめぇが持つ情報次第だ」


 俺の言葉に、ディジーが横でため息を漏らす。


「シェラ、情報が集まらなくて腹が立つのはわかるけど、そんな言い方するもんじゃないよ。何をそんなに焦っているんだい」


 ディジーが俺にそう話した。

 俺は舌打ちをして、ルインを思い出す。


 今が大事なんだ。

 全員にとって、何回でもある挑戦だ。

 繰り返し、繰り返し、何回でも踏み出せる。

 だが……。


 直後、頭の中にこびり付いた記憶が再生され、反響する。


『助けてくれ……! 頼む……頼む……』


 もう、数年経っているのに、鮮明に再生される記憶に俺は頭を叩き、上がる心拍を抑えようとする。

 助けるんだ、次は……。


 深呼吸をして、心拍を下げる。

 あの日も、こんな快晴だったな。


 焦るな、焦れば見落とす。

 視野を広げろ、今は情報だ。


「すまん、情報が欲しい」

 

 俺は獣人を見つめ、そう話す。

 彼はニヤリと笑って、手を擦った。


「どんな情報ですかな?」


「空が白く染まる現象について」


 その言葉に、獣人は首を傾げた。

 

「……えっと、作り話とかって事ですかい?」


 獣人がそう話すと、ディジーがため息を漏らし、俺を見つめた。

 俺もディジーを見つめ、首を振る。


 誰も知らない。

 十数人の情報屋に聞いても得られないもの。

 こんなものが存在するのか……。


 焦りと、無力感で視界が赤く染まる。

 そんな時、胸に温かな感覚が広がる。

 

 ディジーが俺の胸に手を置き、首を振った。


「ありがとうね、アタシ達は失礼するよ」


 ディジーに促され、俺は屋上の扉に足を向ける。

 扉を開けるための取っ手を捻り、引く。

 バタンッと音を立てて閉まった鉄製の扉は、力を込めすぎたためか取っ手が潰れ、背後が慌ただしくなる。


 そんな俺を見たディジーのため息が、背中から聞こえた。

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