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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第五章:情報

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Episode:6 一行

 ――ルイン


 本をめくり、背もたれに体重を預ける。

 どうも、うまく行かない。


 行かない……とは違う。

 情報が集まらない。

 魔術も読んだ、魔物図鑑、派生魔術の書物も漁った。


 だが、どうもダメだった。

 

 漏れそうになるため息を飲み込み、頭を抱える。

 無意識に手に力が入り、頭皮に痛みが走った。


「はぁ……」


 漏らしてしまった。

 変わらない現状、先の見えない状況。

 変えたいと思って前に進むたび、焦りで大切なものを見落としている気さえしてしまう。


「どうするか」


 現在の刻は不明。

 それだけ書物に熱中していたのだ。

 もっとも、その熱中は自己的なものではないが……。


 直後、扉が開いた。

 僕がそちらに視線を向けると、見慣れた二人が立っている。


 黒い鱗を生やした蜥蜴人(リザードマン)と、褐色の肌に銀髪の褐樹人(ダークエルフ)だ。


 二人は僕を見つけると、こちらに歩いてきた。

 蜥蜴人はため息を漏らし、褐樹人は頭を掻く。


「どうでしたか? シェラ、ディジーさん」


 僕の声に、二人は同時に首を振った。


「悪い、何もねぇわ。情報屋も当たってみたが、収穫は無し。空が白く染まる現象は、黒曜区分の冒険者でも知らねぇみたいだ」


 シェラはそう話した。

 眉間を鋭い爪で掻きながら、ため息を漏らす。


「ディジーで構わないよ。アタシの方もダメだね、シェラと同じで、情報屋や冒険者にも聞き込みをしたけど、有力な情報は無し、魔術が、魔物か、そこら辺がわかるだけでもかなり違うんだけどねぇ」


 ディジーはそう話しながら、腕を組み、少し考え込む。


「他には、心当たりのある書物はないのかい?」


 ディジーは、そう話しながら本棚が並ぶ図書館内を一瞥する。


「ありません。この数十日で、魔術、魔物の書物はかなり漁りました。派生も合わせて一千冊は超えてます。それでも、何も情報が得られないんです」


「まだ、入荷していないとかは?」


 僕の言葉に、シェラがそう返した。

 その言葉に、僕はシェラに視線を送り、口を開く。


「二日後、新たな本が入荷します」


「なら……」


「絵本です」


 シェラが何かを話す前に、遮るようにして僕は話し始める。

 絵本、童話、確実に現状には関係がない。


「絵本……」


 ディジーが顎に指を当てながら少し考える。


「魔術や魔物のことが絵本に書いてたりしない?」


「あり得ません。繰り返すと言っても、無駄にしていいわけじゃない、一縷の望みにかけるとしても……正気じゃない」


 僕がそう話すと、ディジーは小さく、確かに……と呟いた。


「なら、まだ本を見つめるつもりか?」


 シェラは積まれた本を爪でなぞりながら僕を見つめた。

 効率悪い……とでも言いたそうだ。

 だが、情報がない今は、これしか手法がないのも事実だった。


「取り敢えず、今はそれしかありません。前に進む道も、情報がなければ見えませんから」


 僕がそう話すと、ディジーが頷いて向かいの席に座る。

 そして、本を一冊取った。


 そんな行動が意外だったのか、僕とシェラはディジーを見つめた。

 見つめられてることに気がついたディジーは、眉を歪める。


「なに?」


「いえ……」


「あぁ、そう」


 冷たい返事をした後、ディジーは本の文字に視線を落とす。

 それを見て、シェラはため息を漏らした。


「はいはい」


 そう小さく呟き、シェラも本を一冊手に取る。

 そして、僕の横に座って本を開いた。


 僕とディジーは、シェラを見つめる。

 シェラも、見られることに気づいたのか、本に視線を落としながら口を開く。


「なんだよ」


「いや……別に」


 僕はそう言って、視線を本に戻した。

 この空間は静寂に包まれ、本をめくる音だけが響く。

 いつか来る、有益な情報を目指して……。

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