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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第五章:情報

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Episode:2 高み

 僕がシェラ、ディジーと別れ、玄関を跨ぐと、後ろから声をかけられる。

 振り返り、声の主を確かめた。


「ルイン、どこ行くの?」


 そう話す声の正体は、青い髪を一つに編み込み、肩から垂らしている少女、エヴァだった。


「ちょっと、図書館に」


「どうして?」


 エヴァはそう話し、僕を睨む。

 彼女は、毎回僕を見つける。

 何度繰り返しても、彼女は僕を探し、きっと見つけるのだろう。


「大事なことがあるんだ」


 僕がそう話すと、エヴァの瞳が揺れた。

 青く、綺麗なまつ毛。

 心配性で、世話焼き。

 そんなエヴァを助ける為……。


「そんなに、大事なことなの? 実技試験より?」


 エヴァの言葉に、僕は拳を握る。

 強く握り、そして深呼吸をした。

 

「あぁ、めちゃくちゃ大事だ」


 僕の言葉に、エヴァは俯く。

 彼女は魔術が得意だ、知らない事は無いかのように、なんでも出来てしまう。

 再配置が起こる前の初めの日、エヴァは確かに言った。

 私も努力をしていると……。

 そんな彼女を、僕は蔑ろにしてしまった。

 突き放してしまった。

 まだ、謝れてもしないまま、再配置が起きてしまった。


「エヴァ、ごめん」


 僕は、そう漏らしていた。

 それは、実技試験を投げ出そうとしている現状に対してか……それとも、あの日言えなかった謝罪か。


「ううん、凄く、大事なんだよね?」


 エヴァは首を振ったあと、まっすぐ僕を見つめて言った。

 

「あぁ、大事だ」


 僕が答えると、エヴァは目を見開いた。

 濡れた瞳が僕を見つめる、驚きと、困惑だ。

 不真面目に生きてきたつもりはない。

 だが、何かをするためにここまで必死になった事はなかった。

 それが、もしかしたら伝わったのかもしれない。


 エヴァの口元が優しく上がる。

 そして、僕を見つめた。


「なら、待ってるね。ずっと」


 エヴァはそう話した。


 僕は目を見開く。

 それは、この数十日で、初めて見た優しい笑顔だ。

 可愛い、綺麗だ。

 だからこそ、今の状況がひどく憎い。


 目頭が熱くなり、視界が潤む。

 彼女にとっては初めての日、僕にとっては数回目。

 だが、初めて……待ってる。そう聞いた気がした。


「……必ず迎えに行くから。絶対」


「うん! 信じてる」


 エヴァの言葉を背中に受け取り、僕は校舎から足を踏み出した。



 ――シェラ


 校舎の中を歩く。

 背が高いおかげか、廊下の端までよく見えた。

 

「情報を集めるとは言ったが……何からすりゃいいんだぁ?」


 俺は少し首を傾げ、天井に目をやった。

 角には埃が溜まり、手入れされていないのが目に入る。

 人間のような小さい種族では掃除が出来ないのだろう。


 俺はため息を漏らし、視線を下げる。

 思考が他に吸われる、悪い癖だ。

 取り敢えず、考える事は一度やめだ。

 順々に声をかけてみるか。


 俺はそう考え、視線を巡らせる。

 狙うのは冒険者、情報を大量に持っているはずだ。

 必要であれば、金か武力で聞き出せばいい。

 冒険者と言っても、適当に選ぶわけじゃない。

 長年、剣士として冒険者をやっていた俺だからこそ分かる、直感ってやつさ。


「おい、ちょっといいか」


 俺は、目の前を歩く獣人(アニマ)の女に声をかける。

 俺を視界に入れた瞬間、表情がこわばった。


「な、なんでしょう?」


「おいおい、そんなに怯えんな……。ちと聞きてぇ事があるんだがよ、教えてくんねぇか?」


 俺の言葉に、獣人の女は首を傾げる。

 小さいな。

 俺たち蜥蜴人(リザードマン)とは違い、人間ほどの身長しかない。

 こんな種族も、冒険者をやっていることに少し疑問があった。

 初めはなかった疑問、だがきっと、あの時から持ち始めたのだ。


「悪いな。おめぇ、空が白くなる現象を見たことあっか?」


 俺は獣人の女に目線を合わせるためにしゃがみ、そう話した。

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