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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第五章:情報

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Episode:1 初めの一歩

 ディジーはゆっくりと、等級章を外套の下にしまい、ため息を漏らした。


「シェラ、アンタの等級は?」


「黒曜銀」


 シェラが答えると、ディジーの目が鋭くなる。

 切れ長のまつ毛が輝き、紫色の瞳がシェラを睨んだ。


「等級章が二つ……って話だったが、不正登録の冒険者じゃないだろうね?」


「そこは安心してくれていい」


 ディジーの真っ向からの質問に、シェラははっきりと答えた。

 そして、シェラ僕を見つめる。


「今、現状でいい。わかってる事を教えろ」


 シェラは僕を見つめながら話す。

 僕は少し考え、口を開いた。


「制限時間……と言っても、再配置が起こるのは、王都の祭りの前日……日付が変わる頃です」


「祭り?」


 僕の言葉に、シェラは首を傾げた。

 その光景を見て、ディジーが外套の中から一枚の紙を取り出す。

 それは、王都の祭り開催を知らせる、宣伝用の紙だった。


「あぁ、これね」


 ディジーはそう呟きながら、シェラに押し付ける。

 シェラは不服そうな顔をしつつも、紙を受け取り、目を通した。


「その日に、辿り着けないんです」


 僕がそう話すと、シェラは目を細める。


「あと六日しかねぇじゃねぇか。その……なんだっけ? 再……」


「再配置」


「それだ。他に情報は?」


 シェラの言葉に、僕は記憶を辿る。

 だが、何も浮かばなかった。

 それもそうだ、僕が集めていた情報は、現象に対してと、人に対して。

 情報が無いわけじゃなく、今も情報を集めている最中なんだ。


「わかりません。空が白く染まる現象は、取り敢えず自然現象では無い。魔術の線も考えましたが、魔力の粒子は感じなかったし、シェラも感じ取った様子はありませんでした。魔術の線も薄いかと」


 僕が話すと、シェラは口を歪ませる。

 検討もつかない、そんな顔だ。

 情報が圧倒的に少ない。


 そんな時、ディジーが口を開く。


「その、空が白く染まると、どうなるんだい?」


 紫の瞳が揺れ、決意を表す。

 目の前の奇妙な現象に、向き合おうとしている証拠だ。

 魔術師……特に樹人(エルフ)褐樹人(ダークエルフ)の長命種は、異常なまでの探究心を持つ。

 それが、今回は活きるかもしれない。


「再配置が発生します」


「……そのさっきから何度も口にする再配置ってなんなんだい」


 ディジーは、僕とシェラに交互に視線を送りながら問う。


「再配置。世界中の生物から記憶が消え、今日の朝に(とき)が戻ります」


 僕がそう話すと、ディジーの瞳が大きく揺れた。

 不安、困惑。そんな色だ。


「ルインを除いてな。ルインだけは、記憶の保持を許されてる」


 シェラが、そう補填した。

 記憶の保持に関しては、僕からは話していない。

 だから、シェラはこの状況を知っている事は間違いがなかった。


「死んだらどうなるのさ……」


 ディジーが口を開く。

 簡単で、当然の質問だった。


 だが、僕は死んだことがない。

 そのまま再配置を迎えると、どうなるのかは、予測ができない。


「わかりません」


 僕は首を振り、ため息を漏らす。

 その態度に、ディジーは眉を歪め、肩を落とした。

 それは、死ぬことへの恐怖か、死を凌駕した先の探究か、僕にはわからない。


「まずは、情報集めだ」


「どうするつもりですか?」


 シェラの言葉に、僕はそう返答した。

 彼は腕を組み、唸る。

 初めから情報集めという選択肢しか出ないのなら、再配置を知ってはいるが、未経験……ということなのだろう。


 知識のみの……。


「取り敢えず、アタシとシェラは、同じ現象を見たことがある奴がいないか、校舎、王都内で聞き込みをしてみるよ。黒曜銀と黒曜金だ。簡単に答えてくれるはずさ」


「だな。数刻経ったあたりで……」


 ディジーの言葉に、シェラは賛同し、少し考える。


「図書館……はどうでしょうか?僕はそちらで情報が得られないかさらに漁ってみます。数刻経った時、図書館で合流しましょう」


 僕がそう話すと、ディジーとシェラは頷いた。


「よし、なら、一旦解散だ」


 そう言って、世界の真実に一歩でも近づくため、全員が別々の方向に歩き出した。

 僕は、図書館を目指すため、校舎の玄関に向かった。

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