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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第四章:魔術師

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Episode:10 冒険者5

 シェラは、僕を見下ろしながら牙を見せ、不敵に笑う。

 それは世界を渡り歩き、信頼を勝ち取る冒険者の顔ではなく、不幸を振り撒く魔物のような笑みだった。


「アンタ、その少年が話す事、まさかとは思うけど、本気で信じるんじゃないだろうね?」


 ディジーは太陽に透かされた銀髪を揺らしながら、ため息を漏らして壁に寄りかかる。

 僕とシェラを見つめ、腕を組んだ。


「おい、あんちゃん。俺様の事、どのくらい知ってる?」


 シェラは低く、口先から二股に分かれた舌を出しながら話す。

 興味があるのだろう、そして……初対面の人間に、どれだけ知っているかと問うシェラ。

 何かを知っているのは明白だった。


「何って……まだ何も知らない。あなたは、等級章を二つ持っていて……黒曜銀と、黒曜金。それとシェラって名前な事くらいしか……」


 僕がそう話すと、シェラは眉を歪め、何かを考える。

 いつになく真面目だ……。

 いつになく……と言うのはおかしいだろうか。

 この再配置では初対面なのだから。


「次は、何が起きる?」


 シェラは僕にそう問う。

 僕は喉をさすりながらゆっくりと立ち上がり、口を動かした。


岩人形(ゴーレム)の暴走です」


 僕がそう答えた直後のことだった。

 校舎が揺れ、大気が震える。

 轟音と共に、自然が異常を知らせた。


「魔術失敗したぞ!」


「岩人形だ! 先生呼んで!」


 外からそんな怒声が響いた。

 シェラは僕を見つめ、ため息を漏らす。

 ひどく、そして重い。のしかかるようなため息だった。

 そのため息にはどんな理由が含まれていたのか僕には理解できない。


「十分だ。よろしくな……えっと」


「ルインです。シェラは、何か知っているんですか?」


 僕の問いかけに、シェラは首を振る。


「いや、知らねぇ。だから、毎回ルインが教えろ」


 その言葉に、僕は目を見開く。

 シェラは今、()()と言った。

 世界を繰り返していることを知っているんだ。


「ちょ、ちょっとアンタたち、アタシを置いていくんじゃないよ」


 完全に蚊帳の外にいたディジーが、壁から背を離して近づいてくる。


「なんだ」


 シェラは、ディジーを睨む。


「あ、いや。何が起きてるのか教えておくれよ」


「……いいか?」


 ディジーの言葉に、シェラは僕を見て問う。

 その言葉に、僕はゆっくり頷いた。


「あのな、褐樹人(ダークエルフ)。今、ルインは繰り返してるんだぁ、記憶の保持も、おそらくルインだけだろう」


 シェラの言葉に、ディジーは首を傾げ、額に手を置く。


「ちょっと待って。く……繰り返してる?」


 自身の知識を超過した出来事に、ディジーは頭を抱えた。


「あぁ……。ルイン、今何回目だ?」


「わかりません。おそらく……五回目くらいかと」


 僕がそう答えると、シェラは舌打ちをする。


「どこまでわかってる?」


「まだ何も、王都からは出たことがないんです」


 僕の言葉に、シェラの顔が険しくなる。

 

「まだ浅ぇ」


 シェラはそう話しながら、自身の胸元に手を当て、握る。

 首からかけているのは等級章……。

 願掛けのようにも見える動きだ。

 その真意は不明だが。


「おい、褐樹人。来るか? 異常で、知らないものが沢山見れるぞ」


 シェラは手を下ろし、ディジーを睨みながらそう話す。

 ディジーは眉を歪め、熟考したあと、諦めたようにため息を漏らした。


「嘘だったら殺すからね」


「やってみろ」


 ディジーの言葉に、シェラはニヤリと笑う。


「俺は、シェラ。褐樹人、お前強いのか?」


「私ディジー……。ええ、強いわ。かなり」


 そう言いながら、ディジーは漆黒の外套の下に手を入れ、何かを取り出す。

 次の瞬間に現れたのは、金色の円盤を、黒い石が囲むようにつけられた手のひらほどの大きさの首飾りだった。


「……へぇ。黒曜金級……最高等級か」


 ディジーの見せた首飾りに、シェラ不敵に口角を上げた。

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