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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第四章:魔術師

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Episode:7 冒険者2

 手を伸ばし、褐樹人(ダークエルフ)の手を掴む。

 僕に手を掴まれた褐樹人は、怪訝そうな顔で振り返り、僕に視線を落とした。


 腰まである銀髪の長髪が揺れ、切長の瞳が僕をのぞく。

 深淵まで見通しそうなほど透き通る紫の瞳、漆黒の外套の隙間からは、褐色の肌が艶かしく顔を覗かせ、豊満な胸元が揺れる。

 身長は人間より大きく、蜥蜴人より小さい。

 百八十程度だろうか。


 彼女は、僕を見下ろし……。

 いや、見下ろすというより、睨んでいるに近い表情だった。


「……なんだい」


「あ、いや」


 咄嗟に手を掴んでしまった。

 女性だったのか……。

 首から足まで覆う、漆黒の外套を纏っているから気が付かなかった。

 露出は少なく、足も、腕も衣服から出ていない。

 谷間が少し見えるくらいの薄く黒い布を纏う彼女は、外套を翻しながら体をこちらに向けた。


「なんか用かい?」


 翻した外套の内側には、無数の道具が散見される。

 魔術を扱う機構を搭載した巻物、指輪や杖などの魔具。

 そして、一際目を引いたのは、左腕を乗せていた青白く光の剣だった。


「……魔剣――」


 僕がそう呟くと、彼女は外套を引き、魔剣を隠す。


「なんか用かい?用がないならアタシは行くけど」


 動物の尻尾のように結いた銀髪を揺らしながら、彼女はため息を漏らす。


「あ、いや……」


 僕は声が出なかった。

 褐樹人が持つ魅了にも近い美貌、それに見惚れていたのもあるだろう。

 だが、それ以外にも、魔具を多量に保持しているからか、異常にして異様な魔力が彼女からは溢れていた。


 こんなやつがいたのか。

 なぜ気づかなかったのか。


 今まで、廊下にこんな魔力が漂っていたことはなかったはずなのだ。

 それに、シェラが気が付かないわけがない。


 僕は、去ろうとする彼女の背中に声をかける。

 それは、自分が思っているよりも大きく、廊下に響いた。

 周囲の目が僕に向き、すぐに興味を失ったように目を逸らす。

 だが、褐樹人の瞳だけは僕を見つめていた。


「空……空が白く染まる現象を知っていますか?」


 褐樹人はそれを聞いて、首を振る。


「すまないね。それは、見たことがない。かなりの期間冒険者をしているけど、ただの一度も見たことがないよ」


「そ、そうですか」


 僕はそう呟いて、視線を落とす。

 褐樹人はそんな僕を見て近づいてきた。

 しゃがみ込み、視線を合わせる。

 先ほどまでの鋭く、値踏みするような瞳とは、明らかに違っていた。


「少年、君は見たことがあるのかい?」


 褐樹人の彼女は、僕の瞳を覗き込むように近づいて、そう話してきた。

 透き通るような紫の瞳、透き通っているのに、その奥には底知れない闇が見えているような、吸い込まれるような瞳に、僕は喉を鳴らす。


「……何度か」


 僕がそう答えると、彼女は目を見開いた。

 

「……へぇ、魔力の粒子はあったのかい?」


「いや、焦っていたから、わからないんです」


 僕がそう話すと、彼女はニヤリと笑う。


「少年といれば、それ、見れる?」


「はい、確実に」


 そう話すと、褐樹人は目を輝かせた。


「いいね。知らない知識を得られるのは、思っても見ない収穫だ。もう知り尽くしたと思っていたよ」


 彼女はそう言って、僕に右手を差し出す。

 そして、口を開いた。


「アタシの名前は、ディジー・ミリアム。ディジーって呼んどくれ」


 そう話した褐樹人の彼女、ディジーの右手を、僕は握った。

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