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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第四章:魔術師

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Episode:5 出発点

 いつも通りの再配置。

 母親の声で目が覚め、支度をし、エヴァと共に家を出る。

 草原に囲まれた街道は王都まで続き、その道の上を、僕は笑いながら歩いた。

 隣にいる彼女も、これから会う老婆、蜥蜴人(リザードマン)も、未来のことはわからない。

 

 僕だけが皆より先を歩くが、どこか寂しさや孤独感が否めなかった。

 王都にはいり、人混みに目を向ける。

 前回より少し遅い時間だ、すでに人が溢れかえっていた。


「早く行かないと……!」


 そう言って、エヴァは走り出し、人混みに体を滑り込ませた。

 青い髪が揺れ、すぐに見えなくなる。

 紛れ、消えた。


 僕は未来を知っている。

 犯罪率が上がる人混みの中でも、こうして彼女を追わないのは知っているからだ。

 そうして、僕は別の目的がある……それは。


「――来た」


 何度目かの再会。

 正体は未だわからず、名前、素顔さえも把握しきれていない。

 老婆は人混みから抜け、頭を動かす。

 まるで何かを探しているように……。


「探してるのは、僕ですか」


 僕がそう話すと、老婆の口角が優しく上がる。

 目を隠すように巻かれた布、胸まではある白髪の髪、体を支えるように扱われる杖。

 

「あぁ、ルイン……そこにいたのかい」


 老婆は、優しい声で言った。

 驚くなど、ありえないようだ。


 普通、知らない人間から声をかけられたら少しばかり考えてしまいそうだが、老婆にはそれがなかった。

 まるで、知っているみたいに。


「驚いたりはしないんですね、再配置の影響ですか?」


 僕が淡々と告げると、老婆は少し口を開き、何か言葉を飲み込むように閉じた。


「推測で動くなら、まだ浅いね」

 

 そう話す老婆を見ながら、僕は眉を歪めた。


「私にとっての終着点はここ……。ルイン、君にとっては出発点だ」


 そう言いながら、老婆は僕の横を通る。

 僕は振り向き、背中を見つめて口を開いた。


「あなたは、空が白く染まる現象を知っていますか?」


 そう話すと、老婆の足が止まり、頭だけを動かした。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「よく知ってるよ。そして、たくさん見た。原点はあの子達に委ねられたが、起点は変わらず私……特異点は君かな」


 そう言いながら、老婆は歩き出す。


「私の出発点は過去にある。ルイン、君は今は私の出発点に近づいている……出発点でまた会おうじゃないか、長い旅になる」


 そう言って消えていく老婆を、僕はただ見つめた。

 何を、どこまで知っているのか。

 出発点は過去あると言いながら、僕には出発点で会おうと話した。


 絡まり合う思考の中、僕はモヤモヤした気持ちを抱えたまま、エヴァを待つ。

 老婆の言葉を反芻しながら……。

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