Episode:2 老婆
僕はエヴァの言葉を聞いて、ため息を漏らす。
あの老婆は、もしかして何か知っているのだろうか?
「なんで老人について聞くの?」
「いや、なんとなく気になっただけだよ」
エヴァの言葉に、僕はそう話して、少し考える。
彼女がいるのは心強いが、情報を集める今の段階では、この後に発生する出来事そのものが邪魔だ。
「エヴァ、先に学校に行ってよ。僕は、実技試験より大事なことがあるから、図書館に行く」
そう話すとエヴァは首を傾げた。
「図書館……?」
「うん、すごく大事。実技試験より、何倍も」
僕がそう話すと、エヴァは少し考える。
何かを言いたいのか、魚のように口をパクパクと動かした後、何も言えずに口を閉じ、言葉を飲み込んだ。
「わかった」
エヴァはそう言いながら、地面に視線を落とした。
「あまり無理はしないでね」
「わかってる」
僕はそう答え、息を吐いた。
「もう少しでこの大通りは混む気がするから、早めに学校行きな。試験が終わったら、先に帰ってもいいし、図書館で合流するでもいいよ」
「うん! 行ってくるね!」
エヴァはそう答え、走り出す。
青い髪が揺れる後ろ姿を眺め、その姿が見えなくなってからすぐに、大通りは人で溢れた。
多種多様な種族、店が次々と開き、客を呼び込む声が響く。
それから半刻ほど経った時、僕はあの現象と対峙をする。
「……来た」
僕は小さく呟いた。
人混みの中から、あの老婆が現れたのだ。
僕はゆっくりと歩き出し、老婆の前に立つ。
老婆の頭には布が巻かれ、視界は遮られているはずだが、彼女は何かに気がついたように口角を上げた。
「初めまして……ではないですね」
僕がそう話すと、老婆はゆっくりと頷いた。
「それは……私かい? それともルイン、君かい?」
老婆の言葉に僕は首を傾げ、眉を歪める。
「すいません、質問の意味が……」
僕がそう話すと、老婆はため息を漏らした。
「てことは、まだ浅いみたいだねぇ」
老婆はそう話した。
その声には落胆の気が混じっている。
「あなたは、この先に僕がどんなことをして、どんな未来を選ぶのか知ってるんですか?」
僕のその言葉に、老婆は首を振る。
「そこまでは、私にはわからない。私の役割は、この日、この時間、ルイン……君に会う事だけなんだよ」
老婆が話したその言葉に、僕は更に眉を歪める。
「まだわからない」
老婆はそう言って歩き出した。
小さくなる老婆の背中を見つめ、僕は声をかける。
振り返った老婆に、僕は叫んだ。
「あなたは、僕の味方ですか?」
その言葉に、老婆の口角が上がった。
「あぁ、ルインの味方だよぉ。でも、そうねぇ……君は、私を凄く恨むだろうねぇ……」
老婆はそう言って、僕の前から姿を消した。
「いったい……何者なんだよ」
僕はそう呟いて、踵を返す。
拳に力を入れ、強く踏み出し、図書館を目指した。
全ては……知識を手に入れるために。




