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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第四章:魔術師

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Episode:1 知識の結晶

 僕は血のついていない真っ白なベッドを見つめる。

 再配置……。

 いや、時間そのものが巻き戻っているのか?


「魔術は……」


 僕は数日前……具体的に言えば数日後の話だが、あの日に魔術書を見ながら練習を重ねた魔術を、右手で小さく作り出す。


 魔力の渦が結晶化し、魔術の発動条件を満たした。


「知識があれば問題なく使える……」


 ニヤリと笑った直後、部屋の扉が開いた。

 僕は慌てて魔術を解き、手を隠す。


「ルイン?」


 そう言いながら部屋に入ってきたのは、青い髪に青い瞳を持つ少女、エヴァだった。

 手を隠した僕を見て、エヴァは首を傾げた。


「……学校遅れるよ」


「あぁ、わかってる」


 僕はそう言ってベッドから降り、手を振ってエヴァを部屋から追い出した。

 いつもとは違う......いや、いつもなら怒っていたはずの僕が、何も言わずにただ淡々とエヴァを追い出したことに、彼女は眉を歪めたが、何も言わなかった。


 制服の袖に腕を通し、ボタンを閉めて部屋を出ると、エヴァは扉の横で壁に寄りかかっていた。


「やっときた」


「悪いな」


 僕はそう言った。

 何度も繰り返す日々の中で、精神が安定したか……。

 はたまた諦観と共に生まれた余裕かは定かではないが、少し前の自分自身と比べ、違うことはわかっていた。


 その変化に、エヴァは違和感を覚えている。

 だが、僕は何も言わずに階段を下った。


「ルイン、朝食は?」


 階段を下ると、母親がリビングから声をかけてきた。

 後頭部にも目がついているのだろうか。

 視界には入っていないはずだが、よくわかったな。


 そんなことを考えつつ、僕は玄関に向かう。


「いらない。あっちで食べるよ」


「わかった、行ってらっしゃい」


 そう話す母親の声を聞きながら、僕とエヴァは靴を履いて外に出た。

 視界に広がるのは、いくつかの小さな家と、草原。

 村を囲むようにある柵は魔物避けだ。


 草原には紛れるように花が咲き、中央は王都に続く街道が伸びる。

 その道を、僕とエヴァは歩いた。


 一刻が立ち、王都に入る門の前に立つ。


「今日は試験だね」


 僕がそう話すと、エヴァは首を傾げた。


「え、うん。そうだね……」


 エヴァは不思議そうに話しながら、門番の男に通行証を見せた。

 通行許可をもらい、王都に入ると、エヴァは口を開く。


「ルインが魔術に関しての実技試験に興味を持つなんて珍しいね」


「そう?」


 僕の返答に、エヴァは小さく頷いた。


「なぁ、魔力量だったり、高位魔術の操作を熟達させるにはどうやればいい?」


 僕がそう話すと、エヴァは目を見開く。


「え……」


「いや、だから魔力と魔術操作を手っ取り早くというか……」


 僕の言葉に、エヴァは眉を歪める。

 少し前の僕は、まぁ、確かに魔術が苦手で興味を示さなかった。

 魔術が苦手なのは今でも変わらないし、興味があるかと言われると……まぁ、ない。

 だが、現状を打破するための手段がこれしかないのだ。


「え、えとね、魔術ってのは本来、知識と精神力の両方が必要なの。知識で式を組み、精神で具現化させる。それが魔術。魔力量の増加や高位魔術を行使する為に早いのは……心的外傷……つまり、自身を精神的に追い詰め、心に鎧を作ること……。現に、強い魔術師に大人が多いのは、子供より大人の方が辛い経験が多く、心が強化されているから……とされてるよ」


 エヴァは得意げにそう話した。

 さすが優等生。突発的な質問にもしっかりと返して見せた。


 なるほど……。

 なら、試験監督を務める魔術師の教師は、年齢が……。年齢?


「なぁ、エヴァ。魔術師が、老人の場合はどうなる?」


「え、それはまぁ、かなり高位の魔術師になるんじゃないかな」


 エヴァの言葉で、世界の音が止まったような気がした。

 老人……魔術師かはわからないが、最初の繰り返し、再配置から僕に会う人物がいた。

 

 初対面のはずの僕の名前を呼ぶ老婆が……。

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