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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第三章:異常事態

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Episode:19 知識と手がかり3

 一冊手に取り、目を通し、そばに置いて、さらにもう一冊を取る。

 新たな魔術を見つけるたび、左手が忙しなく動き、体に染み込ませる。

 利き手は右だが、魔力の流れを体に覚えさせるのは、左手でも十分だった。


 だが、その間は意識を左手に集中しなくてはいけない。

 意識が逸れると、想像を追い越して暴発してしまう。

 そんな気がしたのだ。


「……あと何冊あるんだ」


 僕は机に積まれた本を数え、カウンターの裏で高く積み上がっている魔術書を見つめる。

 受付嬢が僕の視線に気づき、満面の笑みを向けてきた。


 別にあなたを見ているわけじゃないです。


 心の中でそう唱え、数えている指を止める。

 具体的な数を知ったら、きっと心が折れてしまう。

 想像できないなら想像しない。

 それが一番、安寧に近い手段だった。 


「読み続けるか……」


 僕はそう呟いてから数刻、ただ本を見て、入れ替え、見て、知識を取り入れた。

 空が赤く染まり、暗くなり始めた頃、青い髪が視界に入った。


「まだ読んでたの? ルイン」


 僕の名を呼ぶのは、朝にあったきり試験を行っていたエヴァだった。


「エヴァ……。終わったのか?」


 僕は疲労と闘いながら彼女に顔を向け、ため息混じりに言葉を紡ぐ。

 そんな僕を見て、彼女は苦笑した。


「うん、完璧。推薦ももらったから」


「そうか……良かったね」


 エヴァは推薦をもらった。

 卒業後に魔術師のところに行き、弟子入りを行う。

 知っている。

 繰り返したのだから……。

 聞いている。

 もう三回ほどは同じ会話をしている。

 だが、目の前に立つ少女、エヴァはそんな事を知る由もない。


「ルインは今何読んでるの? 机の上にまだ沢山あるし」


「魔術書……。まだまだ読むよ、ほら」


 エヴァの言葉にそう話しながら、カウンターを指差す。

 この時にはすでに、僕は魔術書の文字に視線を落としていた。


「うわぁ、あれ全部読むつもり?」


「予定では……」


 エヴァの言葉に耳を傾けつつも、魔術書の内容を読み、頭に入れる。


「あんなにあっても覚えられないよ」


「ははは、確かに。でも何回も見たら覚え……られ……る」


 エヴァの言葉に、僕は徐々に違和感を覚え、彼女の顔を見る。


「え、なに?」


 僕の顔を見るエヴァは、目を瞬かせて首を傾げた。


「そうだ、覚えるはずだ」


 人は憶える生き物だ。

 記憶がある、憶えているはずなんだ。

 なら、なぜ憶えていない?


「記憶操作……?」


 僕は魔術書をいくつも取り、一気に開く。

 記憶操作の魔術があるんだ。

 きっと、そうだ。


 そしてそれは、確かにあった。

 

「見つけた」


 僕の心は、少し安堵していた。

 記憶を操作する魔術を見つけ、目を通す。

 だが、世界そのものを包むほどの説明は、微塵も載っていなかった。

 また、記憶の操作は精神錯乱状態を引き起こしやすく、廃人になる可能性が極めて高い。

 根付いた記憶は操作、消去ができないとも記されていた。


 今まで関わった人間を見ると、そんな態度は見られなかったし、根付いた記憶の操作が難しいというのなら、世界中の生物から記憶を奪うのは至難……それこそ、人智を超えた何かだ。


「てかさ、聞いてよルイン」


 能天気に話すエヴァに視線を向け、僕はため息を漏らす。

 一瞬、エヴァは眉を歪めたが、構わず話し始めた。


「今日、召喚魔術の失敗で、岩人形(ゴーレム)を暴走させた生徒がいてね、一番最初に助けに来たのは、先生じゃなくて真っ黒い蜥蜴人(リザードマン)なの」


 エヴァはため息を漏らし、やれやれといった感じで首を振る。


 シェラの事か……。

 剣、まだ教えて欲しかった。

 僕はそう思いながら、手を見つめる。


 剣を買ってくれたのは嬉しかった。

 友人の証だと。

 その証も、あの白い夜に包まれた時になくなってしまったが……。


 そう考えた直後、違和感が胸を打った。

 先ほどより強く、大きな違和感。


「記憶操作だとしたら……剣だけは手元にないとおかしいよな……」


 僕は自身の手を見つめながら、生まれた直感にニヤリと口角を上げた。

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