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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第三章:異常事態

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Episode:17 知識と手がかり

 僕は、椅子に座り本を読み漁る。

 高く積み上げられた本は、受付嬢がそばの机まで移動してくれた。

 これだけの本を運ぶのは困難だ、小さな僕の体じゃ、重みに耐えられないだろう。


 ペラペラと、紙をめくる音だけが頭の中に響く。

 自然現象が絵に起こされ、わかりやすく解説されているものは、視界に入った途端に違うと判断ができるからありがたい。


 僕は、机の上に置いた本を広げ、めくり、字を指でなぞるように追いながら、違う、と小さく口を動かす。

 見つからない。

 違う、違う、違う、違う、違う違う違う違う違う違う違う。


 頭の中に、その文字が、言葉が繰り返し繰り返し浮かび上がった。

 数十冊に目を通したところで、僕は体重を背もたれに預け、天を仰ぐように本が飛ぶ空を見上げた。


「わからない……」


 そう呟いた時、衣擦れの音と共に青い髪、青い瞳が僕の顔に影ができるように覗き込んだ。


「ルインが図書館なんて、珍しいね」


 視界に入ってきたエヴァの顔に目を細め、眉を動かす。


「なにしてんの?」


「見ればわかるだろ。本を読んでる」


 僕はエヴァの頭に手を置き、押し退けてから体を起こす。


 エヴァは不服そうに唇を尖らせ、机に置いてある本の塔を見つめて目を見開いた。


「こんなに沢山……? 勉強熱心になったの? いつから?」


 エヴァの質問攻めに、僕はため息を漏らして彼女を睨んだ。

 僕が必死になっている理由が、彼女との約束を果たすためなど、世界中を探してもわかっているのは僕しかいない。


「ごめんごめん。そんな睨まないでよ。にしても……すごい本の量。自然……現象?」


 僕が目を通している本を興味深そうに覗き込み、首を傾げる。


「天気について知りたいの?」


 エヴァの問いに、僕は少し考えた。

 天気……あの現象が天気、天候による物かも怪しいのだ。


「いや、天気……とは違うかな」


 僕がそう答えると、エヴァは首を傾げた。


「なら、なにを探してるの?」


 エヴァの問いに、僕は少し考えた。

 なんで説明するべきか、そもそも説明が必要か。

 少し考え、僕は口を開いた。


「空が、白く染まる現象について調べてる」


 僕が話した言葉に、エヴァは首を傾げた。


「白く染まる……どんなふうに?」


 エヴァの問いに、僕は何かを書くように、手を動かしながら話す。


「まるで、黒を白で塗りつぶすみたいに、ブワァって広がってく現象」


 僕は筆を動かすみたいにしながら、エヴァに説明するも、彼女は首を振った。


「知らない。聞いたこともないよ」


「だよね。かなり読んだけど、類似してる現象は見当たらない」


 僕はそう言いながら唇を尖らせ、少しばかり血が上った頭をゆっくりと冷やした。


「自然じゃない可能性はないの?」


 エヴァの言葉に、僕は彼女を見つめ、眉を歪める。


「魔術とかってこと?」


 僕の言葉に、エヴァが小さく頷く。


「可能性は低いかな。世界そのものを包めるくらい強力な魔術なら、魔力の粒子が残るはずだ」


 僕はそう話しながら、空が白く染まった時のことを思い出す。

 魔力の粒子はなかったはずだ。

 いくら魔術の扱いが苦手だと言っても、粒子の流れは感じる。


「だよね」


 エヴァは苦笑しながらも、うーんと唸った。

 直後、彼女は思い出したように目を見開く。


「実技試験、行かなきゃ!」


 そう、この七日間の初日は実技試験だ。

 もう、何回繰り返したか。


「ルインも、早く!」


 足踏みをしながら青い髪を揺らし、エヴァは声を張って僕を呼ぶ。

 その声に、僕はゆっくり首を振った。


「僕はいいよ。やることがある」


 その言葉に、エヴァの足踏みが止まる。

 僕は......どんな顔をしていたのだろうか。

 怒り、声を荒げるかと思ったが、拍子抜けしてしまうほど、エヴァは優しい表情で僕を見つめた。


「……そっか……。わかった。私は行くね?」


 少し寂しそうに答えたエヴァ。

 その言葉に僕はなにも言わずに頷き、小さくなる彼女の背中を見送った。


 まだ、終われない。

 まだ諦めきれない。

 まだ……。


 僕は机に体を向け、静かに本を手に取った。

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