Episode:11 試験の終わり
シェラから受け取った剣に視線を落とし、僕は心臓の高鳴りを感じる。
あの時と同じ状況を生み出せた。
直後、向かいの廊下から知っている声が響いた。
「ルイン!! いた……」
青い髪を揺らしながら小走りでこちらに向かってきた。
「エヴァ……」
「知り合いか?」
「幼馴染です」
こちらに手を振りながら走ってくる彼女を見つめてシェラは呟く、その言葉に僕が返すと、シェラはふぅんと冷たく呟いて、エヴァを見つめる。
エヴァはこちらに向かってきたが、次第に速度が弱まり、シェラの前に立っては顔を見上げた。
その表情には恐怖の色が滲んでいた。
「あ……えと……」
「悪いな、嬢ちゃん、ルインを少し借りてた」
シェラが放ったその言葉に、エヴァはゆっくりと僕に視線を移す。
何か言いたそうだ。
「シェラ、エヴァが怖がっています」
「エヴァっていうのか……」
僕が彼女をシェラに紹介すると、シェラはエヴァを見おろしながらやさしく笑った。
「おい、お前ら……商売の邪魔だ……。どっか行ってくれ」
僕たちの再会に、蚊帳の外だった鍛人の声が横から入っていた。
「あぁ……すいません」
「おっと……わりぃな」
僕は謝罪をしながら少し頭を下げる。
その横でシェラは軽く手を挙げた。
「場所を移動しようか」
僕がそう話すと、シェラはため息を漏らし、エヴァは小さく頷いた。
それから少し歩く。
校舎内、階段の踊り場で、僕たちは立っていた。
初めに口を開いたのはエヴァ、それは今日の実技試験についてだった。
「ルイン、試験はどうだったの?」
その言葉に、僕は首を傾げる。
彼女は、まだ僕が試験をサボったことを知らない様子だった。
「そういうエヴァはどうだったの?」
僕の言葉に、エヴァは一瞬暗い顔をしたが、すぐに明るく振舞って見せた。
「合格、それに、卒業後に魔術師の弟子にしてもらえることになったの」
「おめでとう。よかったね」
エヴァの言葉に、僕は素直に賛辞を贈る。
だが、その言葉を聞いたエヴァの顔は少し寂しそうだった。
「で、ルインは?」
「いや……僕は……」
言い淀む僕に、エヴァは首を傾げた。
その様子を横で見ていたシェラが、ニヤリと笑い口を開いた。
「こいつ、サボったんだよ」
その言葉に、エヴァは目を見開き、僕を見つめた。
驚いたような表情で、エヴァは僕を見つめ、唇を震わす。
「なんで……」
「なんでって……」
エヴァの言葉に、僕は言葉を詰まらせる。
理由は、言えない。
繰り返す日常を、確かめるために行動したなんて言えるわけがない、記憶を持てない彼女に、記憶のないシェラにそんな説明は、できない。
「わかってるの……? この実技試験、すごい大事なんだよ? 課題を決めて、魔術で対抗する術を学ぶ機会なんだよ?」
その言葉に、僕は歯を食いしばる。
説明出来たら、楽だろうか……。
そんなことを思いながら、僕は二人を見つめる。
おかしいのは僕か……世界か……。
まだ理解が追い付かないことが多く、一歩踏み出せない自分がいる。
そのことを、一番理解してるのは僕だ。
「今度、機会が合ったら説明するよ」
僕がそう話した直後、試験終了の合図が校舎に響いた。




