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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第三章:異常事態

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Episode:7 等級章

 顔を歪めたシェラを見て、僕は首を傾げる。

 次の瞬間には、シェラは生徒に優しく笑いかけ、礼を言って踵を返し、歩き出した。

 僕はシェラのことが気になり、付いていくように歩き出す。

 そして、しばらく歩いた時、シェラは足を止めて口を開いた。


「なんか用か? あんちゃん」


 シェラはそう言って、顔を少し傾け、左肩から鋭い瞳を覗かせた。


「……あなたは、黒曜金級ですか?」


 僕のその問いに、シェラは黙り込む。


「知ってどうする?」


「どうもしません。ただ、友の言葉を信じたいだけです」


 僕の言葉に、シェラは体をこちらに向け、首を傾げた。


「友……なんの話だ」


 シェラの声は鋭く、警戒が全身から溢れていた。

 

 やっぱり、覚えていないのか……。

 記憶が消されてる……

 いや、なら試験をもう一度やるのは妙だな。

 人智では理解できない何かが、もしかしたら干渉しているのかもしれない。

 

 気休め程度の……根拠も確証もない曖昧な考えだが、今の僕は、そんなものにでも縋らないと、前に進めない状況にいた。


「あなたは、黒曜銀級のはずだ。なんで、等級章が二つあるんですか……? それとも、僕が知らないだけで、等級章は二つ以上の所持が許されているんですか?」


 僕のその問いに、シェラは顔を歪め、ため息を漏らす。


「名前も知らない子供に、教える義理はねぇよ」


 シェラが漏らしたその言葉。

 聞き逃さなかった僕は、胸を張ってはっきりと答えた。


「ルインです。僕の名前はルイン……。あなたはシェラ……ですよね?」


 僕がそう話すと、シェラは驚いたように目を見開いた。

 僕しか映していない瞳。

 鮮やかなその瞳は、何か小さな希望を見つけたかのようにも見えた。


「あんちゃん……なんで俺の名前を知ってる?」


「…………やっぱり」


 シェラの言葉に、僕は小さく呟いた。

 やっぱり覚えていないのか……。

 たった小さな希望さえも、打ち砕かれた。


 魔力を褒め、剣を友の証として渡し、僕に剣術を教えた蜥蜴人は、もうここにはいない。

 今目の前に立つ蜥蜴人は、僕のことを知らない。


「たまたま、偶然。名前を聞いたんです。かなり上位の等級章だ。名前が知れ渡っていてもおかしくはないでしょう?」


 僕が話したその言葉に、シェラは頷いてあっさりと肯定した。

 同時に、彼はやはり覚えていないのだと実感してしまった。


「強い人は見つかりましたか?」


「いいや、いねぇな。あくまで生徒。上限値はたかが知れてる」


 そう言いながら、シェラは僕を見つめた。


「もし、つえぇ奴を見かけたら、俺様に教えてくれ。ルイン……お前とは長い付き合いになりそうだ。俺様の直感がそう言ってる」


 シェラはそう話しながらニヤリと笑い、牙を見せた。


 純粋な感情のその笑顔は、僕の心をかき乱す。

 記憶のない蜥蜴人と、記憶のある僕の叶わない約束。

 それを聞いている僕は、世界に取り残されたような気がした。

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