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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第三章:異常事態

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Episode:6 蜥蜴人2

 走り出したシェラの背中を僕はただ見つめていた。

 担がれた大曲剣、太陽の光を反射し、黒く光る鱗は、黒曜銀級に相応しいようにも見えた。


「行くぜぇ!」


 重い足音と共に、シェラは岩人形に距離を詰める。

 岩人形は大きく、裏庭で召喚するには広さが足りないようにも見える。

 この裏庭では、どんな試験をしていたのか。


 教師陣がなかなか駆けつけないところを見ると、試験ではなく、試験にこれから臨む者たちの準備運動で勝手に行なっていたのかもしれない。


 シェラが担ぐのは骨の大曲剣。

 ガタガタと刃こぼれした大曲剣は、一見すると岩より脆く、岩人形に対して有効打にはならないように見えた。


 岩人形を翻弄するかのように左右に蛇行しながらシェラはさらに速度を上げる。

 標的が左右に揺れることで拳を打ち込めない岩人形は、目でシェラを追いかける程度が限界だった。

 シェラは凄まじい速度で岩人形の懐に入り込み、睨み上げる。


 体長差は数倍、大きいはずのシェラでさえも小さく見えるほどだが、シェラの瞳には一切の迷い、恐怖が存在しなかった。


 懐に入り込んだシェラは、一瞬だけ動きを止める。

 その隙を、岩人形は見逃さない。

 力一杯に溜めたであろう拳を、シェラをすり潰すかの如く地面に放つ。

 瞬間のことだった……。


 砂煙が上がると同時に、何かが破裂するような音が耳を打つ。

 前回……僕が訓練中にはこんな音は聞こえなかった。

 ここら一帯にしか響かない高音、そしてその音一つで決着はついた。


 砂煙が衝撃で晴れ、岩人形とシェラの姿を鮮明に映す。

 立っていたのは、両者……だが、数秒後、岩人形の大きな胴体が腰から二つに分かれ、崩れ落ちた。


 圧倒的なまでの力量。

 圧倒的なまでの技術。

 観察眼と、弱点を見抜く力……そして、何にも臆さない強靭な精神力……。


 砂煙が落ち着いていく中心。

 渦中にいるシェラは溜息を漏らして、大曲剣を背中に戻す。


「よし……」


 小さく呟いたシェラは、崩れていく岩人形を見つめる。

 そして、何かを察したのか、小さく頷いた。


「まぁまぁだな。生徒にしてはいい筋の岩人形だ」


 シェラはそう言いながらこちらに視線を送り、僕のもとに歩き出す。

 僕を見つめる色彩豊かな瞳は、落ち着いていた。


「どうだ?」


 シェラに声をかけられ、僕は首をかしげる。

 

「どうだ? とは?」


「俺様の戦いを見てもなお、あんちゃんはアレに勝てると思っていたのかって話だ」


 純粋で、刃のあるシェラの問いに、僕は拳を握る。


「思いません」


「ふむ……。それがわかるなら、あんちゃんは長生きするさ」


 そう話してシェラは僕の横を通り過ぎていく。

 すれ違いざまにシェラは僕の肩を叩いた。

 優しかったはずのその叩き方でも、少し痛みを感じた気がした。


蜥蜴人(リザードマン)!!」


 どこかに行こうとしたシェラに、他の生徒が声をかける。

 その声に、シェラは振り返った。


「なんだ?」


「これ落としました」


 そう言って生徒は等級章を掲げ、シェラに近づいた。


 きらりと光る等級。

 それに僕は違和感を覚えた。


「……何だあれ」


 僕は無意識のうちにそう呟いていた。

 というのも、シェラが以前から僕に見せたり、門番に見せた物は、黒曜石に銀色の装飾が施された黒曜銀級の等級章だ。

 だが、現在掲げられているのは、金色の装飾が施された物だった。


「まさか、黒曜金級の方だったとは。助けていただきありがとうございます。先ほどは太陽の光のせいで()()()()に見えたのですが、どちらにせよ助かりました」


 生徒はシェラにそう話しながら、頭を深々と下げる。

 シェラはその言葉に、少しだけ顔を歪めた。

 


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