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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第三章:異常事態

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Episode:5 蜥蜴人

 僕はシェラが消えた廊下を見つめて、ただ立ち尽くす。

 誰も、覚えていない。

 覚えて……。


「おい、ガキンチョ。試験始まるだろ、行かなくていいのか? それとももう終わったのか?」


 鍛人(ドワーフ)の男が、僕を見上げてそう話した。

 彼は長い髭を触りながら僕を見つめ、ため息を漏らす。


「……何があったか知らねぇが、そんな顔してちゃ、受かるものも受からねぇぞ」


 鍛人の男はそう言って、一本の短剣を僕に向けた。

 鏡面のように反射する刀身は、僕の顔を映し出す。

 そこに映っていたのは、不安に駆られた一人の少年の姿だった。


「取り敢えず行ってこいよ。ガキンチョ」


 短剣を置きながら鍛人はそう話した。

 その声からは、身を案じる柔らかな感情がこもっていた。

 

「はい……ありがとうございます」


 鍛人に軽く頭を下げ、僕は歩き出す。

 問題は、今世界に何が起きているかを知ること。

 前を向け……。

 自身に言い聞かせるように、心の中で唱えて歩き出す。

 目指すのは試験会場の校庭ではなく、岩人形が暴れた裏庭。


 砂を蹴る足音と共に、僕は風を浴びる。

 視界に入っていた赤い髪が揺れ、視界を晴らした。


「こっちだ!」


「先生はまだ来ないの!?」


 混沌とした裏庭には、常に悲鳴と困惑が入り混じる。


 僕は、試験を捨てたのだ。

 親には悪い事をした。

 エヴァにも……でも、確かめなくてはいけない。


 僕は自分に言い聞かせる。

 そして、岩人形と対峙するため、校舎の影から一歩踏み出すと、何者かが肩を掴み、身体を引いた。


 その手は大きく、黒い鱗が生えそろっている。

 革製の軽い鎧に、色彩豊かな瞳、筋骨隆々な身体に、鋭い爪と牙。

 極めつけは、背中に携えた二本の大曲剣。


 よく知っていて、よく知らない人物。

 シェラが視界に映っていた。


「……シェ……」


 僕が彼の名前を呼ぼうとした時、それを遮るかのようにシェラは口を開いた。


「あんちゃん、今アレに突っ込もうとしたか?」


「……まぁ、はい」


 僕の返答を聞いて、シェラは首を振る。


「やめとけ、アレは硬ぇ。純粋な魔術は効かねぇんだ。それに、生徒が作り出したとは思えねぇほどよく出来てやがる」


 シェラはそう話しながら岩人形を見つめる。

 その目は狂気に満ち、闘争を求めていた。


「下がってな」


 シェラはそう言って、一歩僕の前に出る。


「一振りでいいかぁ?」


 シェラはそう話しながらゆっくりと歩き、二本ある大曲剣のうち、一本を抜き出した。


 重い足音と共に、地面についた切っ先が地面を抉り、一本の線を作り出した。


「おい、ソイツは破壊していいんだよなぁ?」


 シェラはそう話す。

 背中しか見えない、表情は見えないが、おそらく、ひどく興奮した表情をしているだろう。

 英雄とは真逆の、悪役の顔を……。


「離れて、危ないから!」


 一人の生徒がシェラに叫ぶ。

 シェラは首元に手を突っ込み、首から下げていた物をあたりに見せびらかすように掲げた。


 真っ黒な石。

 それを囲むように銀の装飾……。


 黒曜銀級の等級章だった。

 その等級章を掲げた時、場が静まり、シェラの世界が完成する。


 直後、シェラは引きずっていた大曲剣を肩に乗せ、走り出した。

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