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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第三章:異常事態

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Episode:2 乱心

 僕は、街道を早歩きでズカズカと進む。

 その心に余裕はなく、視線は王都にしか向いていない。


「ルイン、待ってよ!」


 背後からエヴァの声が響く。

 僕が視線をエヴァに向けると、彼女は酷く焦った様子だった。


「……変だよ! 何かあったなら話してよ!」


 エヴァが発したその言葉に、僕は彼女を睨む。


「変……。変なのは僕か……? 世界じゃないのか?」


「な、何言ってるの……」


 僕の声を聞いたエヴァの顔は、焦りから、小さな恐怖に変化する。

 まるで、知らない誰かを見ているような……。


 僕は、その表情を見て奥歯を鳴らし、先に歩き出す。

 確かめるんだ。


 それから歩き、王都の門まで来た。

 エヴァの話すことが、母親の話すことが本当なら、王都の中は人で溢れかえっているはずだ。

 だって、今日は実技試験で、七日後には祭りが控えてる。


 門番に学生証と通行証を渡し、言葉を待つ。


「ルインもエヴァも、遠くから偉いな」


 僕はその言葉に、何も答えられなかった。

 三度目の言葉、どこまでも既視感を感じる今の状況に、焦りを隠せない。


「……? 大丈夫か、ルイン?」


 何も答えない僕に、門番は声をかけた。


「大丈夫です……。早めに中に入りたいので、お願いします」


「おっと、悪いな」


 門番の男から学生証と通行証を受け取り、乱暴にポケットに押し込む。

 そして、門を潜った。


 視界に広がるのは、多種多様な種族が行き交う王都だった。

 僕は深呼吸をして心を誤魔化し、エヴァを見つめた。


「……なに?」


 エヴァは僕の視線を感じ、不安そうに答えた。


「離れないで」


 僕はそう話し、エヴァの手を掴んで歩き出す。


「え、ルイン……っ!?」


 エヴァは焦った様子で僕の名前を呼び、ついてきた。

 学校に向かう大通り……

 エヴァが姿を消す大通りだ。

 人の群れが一時的にエヴァを連れ去る。

 そして何事もなかったかのようにエヴァは僕の目の前に現れるんだ。


「エヴァ、今回は何も買えない。屋台では、何も買わない」


「なんの話をしてるの……! ルイン、痛いよ、そんな強く掴まないで、付いてくから!」


 エヴァが話したその声に、僕は反射的に手を離してしまう。

 守りたいと思ったものを、自分の手で傷つけていた。


「やっぱりなんか変だよ、ルイン! ちゃんと話してよ!」


「話して何が……何がわかるんだよ……」


 僕が話した直後、エヴァは怒ったのか一人で歩き出す。


「もう……知らないよ、馬鹿」 

 

 エヴァはそうして人混みの中に消えた。


「……っ」


 僕は重い足を前に出し、人混みの中に入ろうとする。

 探さなくちゃいけない、異常が起きてる。

 何が起きてるかはわからない、でも、かなりまずい状況なのだけは理解ができた。


 だから、足を動かした。

 直後、人混みの中から老婆の姿が現れ、接触する。

 僕は体勢を崩し、地面に尻餅をついた。


「あぁ、すまない。大丈夫かい?」


 老婆は僕に顔を向け、そう話す。

 目には布が巻かれ、視界は封じられているようにも見える。

 常に杖を持っているが、それが道標となるのかはわからない。


 僕はその老婆を睨み、ゆっくりと立ち上がる。


「おばあさん……僕たち、どこかで会いませんでしたか?」


 その問いに、老婆は少しだけ顔を上げた。


「……そうか。申し訳ないねぇ」


 老婆は僕に対してそう話す。

 申し訳ない。

 脈絡のないそのたった一言が、僕の心に深く刺さった。

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