表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第二章:あの日から

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/83

Episode:17 繰り返しとやり直し

 翌日の夜……。

 空が闇に包まれたころにシェラは姿を現した。


「よろしくお願いします」


 僕はシェラの瞳を見つめながらそう呟いた。

 シェラは爬虫類特有の瞳をギラつかせ、僕を見つめる。


「あぁ、しっかりと教えてやる」


 シェラは確かにそう言って、昨夜と同じようにランタンに火を灯した。


「姿勢、筋力。これが出来てりゃ基本的には問題ない」


「型などは覚えなくていいんですか?」


 僕の問いに、シェラはため息を漏らした。


「いらない。理由はわかるか?」


「わかりません……」


 僕はその問いに答えられず、目を伏せる。

 基本的なことだろうか?


 僕がそんなことを考えていると、シェラは口を開いて話し始めた。


「理由は簡単だ……流派で扱う型なんてのは、対人用だ。冒険者が相対するのは人じゃなく、魔物、野生だ。覚えたところで、役には立たない」


 シェラが低く唱えたその思考に、僕はすぐに納得した。

 確かにそうだ。

 役に立つわけがない。

 人よりも力が強く、人より躊躇がない奴らに、人のやり方をしても意味がない。


「なるほど……」


 僕はそう呟いて、剣を構えた。

 昨夜の疲労が蓄積し、切先がブレるが、シェラの指導は止まらない。


「しっかり姿勢を保て、冒険者は一日で家に帰れるとは限らない、弱っているから回復するまで待ってくださいなってないぞ。腕と腹筋に力を入れろ、身体から鍛え、慣らせ」


 ランタンの光が揺れ、影が重なり、また離れる。

 視覚的に切先がブレるのを確認し、力を入れ直す。その繰り返し。

 どれくらいやったか、疲労は常に蓄積して、回復などしない。

 そのまま翌日を迎え、学校に行き、訓練をする。


 シェラは毎日欠かさず姿を現し、僕に剣術の指導をした。

 そして六日目の訓練終わり……。


「明日は、休みでお願いします」


「……理由は?」


 僕の要望に、シェラは首を傾げ、問いかけてきた。


「エヴァと、王都の祭りに行くんです」


「エヴァ……あの娘か、なら仕方ない。明日は中止だ。でも、剣は握れよ」


 そう話したシェラは優しく、少し寂しそうにも見えた。


「……シェラも……」


 僕は言おうとして言葉を止めた、シェラは僕を見つめ、怪訝そうな顔で首を傾げた。


「シェラも、行きませんか。きっと、いろんな種族がいます。地方の料理も振る舞われるかも……。だから……」


 僕がそう話すと、シェラは笑いながら首を振った。


「いや、いい。俺様は一人でいくさ。邪魔はできないからな」


 シェラはそう言ってランタンの火を消していく。


「大事にしろよ、友人も、仲間も。裏切られたと思っても最後は許して協力してやれ、いなくなってからじゃ遅い」


 その言葉と同時に、最後のランタンの明かりが消えた。


 あたりが闇に包まれ、シェラの黒い体は闇に溶ける。

 境界も曖昧になる中で、シェラの声が響いた。


「明日頑張れよ」


「ありがとうございます」


 その日はそれで解散。

 僕は家に帰り、重い足取りのままベッドに寝転がり、服も変えずに眠りについた。


 朝の光が部屋を照らし、眩しさに顔をしかめる。


「ルイン! 早く起きなさい!」


 母親の大きな声で目を覚まし、ベッドから飛び起きた。

 訓練が終わった後とは思えないほど身体が軽く。

 朝の光が気持ちいい。


 準備をして、早めに出なくては……。


 階段を駆け下り、母親の姿を見つける。


「おはよう、今日はエヴァと祭り行くから」


 そう話すと、母親は振り返り僕を見て話を始める。


「祭りって? 何かあったっけ?」


「あれだよ、王都の祭り」


 僕の返事を聞いて、母親は更に首を傾げた。


「それは七日後でしょ」


 母親のその言葉に、僕は顔が引き攣る。

 また、夢を見ていたのか。

 違う、訓練は現実だったはずだ。

 じゃあ、今の身体の軽さは?


 僕は止まらぬ思考と共に、自身の手を見下ろす。


「何が……どうなって……」


 呼吸が荒くなるのを感じながら、僕は歯を食いしばった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ