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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第二章:あの日から

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Episode:15 剣術訓練

 一度自宅に入り、階段を上って自室から剣を一本取り、玄関に向かう。

 靴に履き替えている途中で、母親の声が背後から響いた。


「どこか行くの?」


「ちょっと剣振ってくる。近くだし大丈夫だよ」


 僕はそう話しながら、靴を履いて立ち上がった。


「剣ねぇ……魔術はやめたの?」


「向いてないんじゃないかな、魔術は……」


 少し考えてからそう話すと、母親は赤い瞳で僕を見つめて、小さく頷いた。


「そっか、頑張りなさいね」


「うん、ありがとう」


 母親の言葉に頷き、僕は玄関を開ける。

 外に出て少し歩くと、シェラがランタンに火をつけ、いくつか地面に設置をしていた。


「……何をしているんですか?」


「暗いと切っ先のブレや体の動きが見えないだろ。俺は夜目が利くからともかく、人間であるルインは話が変わる。影を確認することで、ブレも視覚的に自覚できる」


 そう話しながらシェラはランタンに火をつけて地面に置いていく。

 金属が土の上に置かれる音をただ聞きながら、僕は彼を見つめた。


「さて、始めるか」


 そう言いながらシェラは少しだけ体を伸ばし、円形になるように置かれたランタンの中心から外に出た。


「まずは真ん中に行け」


 シェラは僕に指をさし、円形の中に行くように指示を出す。


 僕はその指示に従いランタンを跨いで円の中心に入る。


「鞘から剣を抜け」


 僕は頷き、鞘から剣を引き抜く。

 シェラはそれを見て、頷いた。


「鞘はこっちに」


 シェラの言葉で鞘を彼に投げ、僕は深呼吸をする。


「じゃあぁ始めるぞ」


「準備運動とかはしなくていいんですか?」


 僕の問いにシェラは首を小さく振る。

 それは少し呆れているようにも見え、ため息交じりに口を開く。


「敵が出るのは基本的に突然だ。準備運動は確かに必要だが、魔術を中心に扱うなら、基本的には問題ない」


 シェラがそう話すと、僕は首を傾げた。

 あれ、魔術が使えないことは言っていなかっただろうか。


 シェラは僕を見て首をかしげる。


「僕は魔術は使えません……というか、苦手なんです」


 その言葉に、シェラは目を見開いた。


「冗談だろ? 校庭に漂ってた魔術の匂いは厚く、深かった……重厚で、密度のある匂いだったぞ……」


 腕を組みながらシェラは思い出すかのように唸る。

 少し考えた後、ため息を漏らして話し始めた。


「いや、魔術が使えないと仮定しよう。原因はわからねぇからな……。だとしたら、なおさら準備運動はしない、安心しろ、初めから怪我をするような訓練はしない」


 そう言って、シェラは僕を睨む。


「まずは握れ、握って、手になじませろ」


 シェラが話すその言葉に僕はただ頷き、剣を握る。


 剣を握った手のひらから伝わる鉄の冷たさ、重量感、ランタンの光に当てられた輝く切っ先……。

 そんなことを考えるていると、次第に剣を握っている感覚が鋭くなり、現実感が増していく。


「わかったか、ルイン……。お前が今握ってるのは、そういう代物だ。魔術のように実感がなく扱えるもじゃない。でも、やるんだろ?」


「……お願いします」


 僕の言葉に、シェラはニヤリと笑った。


「よし、まずは適当に振れ」


「技とか、姿勢などはないんですか?」


 僕の言葉に、シェラは首を振り、僕に視線を向けて口を開く。


「ペンの持ち方を知らない奴に、字の書き方を教えるのか?」


 その言葉を聞いた瞬間、妙に納得がいった。

 極端な例ではあるが、わかりやすい。


「まずは慣れること、それが最優先。でも、ただ持つだけじゃ意味はない。適当に振れ、見といてやる」


 シェラはそう話して、近くの土の上に座り込んだ。

 剣術の指導を始めようとしている彼の表情は、昨日よりも険しかった。

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