Episode:14 約束
教室の前でエヴァを待つ。
窓の外は少しずつ赤みを帯びていき、夕陽が空へ浮かぶ時間になる。
直後、エヴァのいる教室の扉が開き、続々と生徒が出てきた。
エヴァはその後続に続き、僕を見つけた瞬間にこっちに駆け寄ってきた。
「ルイン待ってたの?」
「あんまり、少し遅かったね」
僕の言葉に、エヴァは苦笑いをして、ため息を漏らす。
「先生の授業が長引いてね……好きな分野だったのかな、熱が入りすぎて鐘が聞こえなかったみたい」
そう話すエヴァは疲れたとでも言うかのように首を回した。
「疲れてるの?」
「なんかね……さっきも言ったけど昨日の実技試験で魔力を使いすぎたのかも……」
そう言いながら眉を歪めるエヴァを見て、僕は窓の外を一瞥する。
夕陽が顔を出し、空が赤く染まる。
「もう帰ろう? ルイン」
「そうだね」
エヴァの要望に応えるように僕は歩き出した。
王都を出て街道を歩く。
その間も、エヴァの元気は少し足りなく、いつもとは明らかに違って見えた。
「明日は学校休めば?」
「嫌だよ、皆に追いつけなくなっちゃうじゃん」
僕の提案にエヴァは即答で首を振り、そう話した。
僕とは違うな……。
徐々に暗くなる空を見つめ、街道を進む。
かなり歩いたところで、やっと村の明かりが見えてきた。
「もう少しだね」
「だねぇ」
僕の声に、エヴァは少しぐったりしながら話した。
「だ、大丈夫?」
「うん、大丈夫! 今日暑かったし、昨日はなかなか寝付けなかったし、それもあるのかな?」
エヴァはそう話しがらトボトボ歩いていた。
僕はエヴァの手を取り、ゆっくりと引っ張る。
手の温かさと、柔らかさに心臓が高鳴り、僕は彼女の顔を見れなかった。
「ありがとう、ルイン」
「いいよ、お礼なんて」
僕はそう言いながらも内心はドキドキしていた。
この幸せな時間が続けばいいと......そう本気で思っていた。
「そうだ、ルイン……」
「ん? どうした?」
僕が振り返り、エヴァの顔を見ると、彼女の顔は少しだけ赤くなっているような気がした。
「あ、あのさ……? 王都の祭りの日、何か予定とかあったりする?」
「んー……。今のところはないかなぁ」
エヴァの言葉に僕がそう答えると、彼女はわかりやすく目を輝かせた。
「じゃあさ、王都の祭りの日、迎えに行くから一緒に行こ?」
「わかった、待ってるよ」
そう話すと、エヴァは満面の笑みを見せた。
「じゃ、なるべく早く魔力を回復させてないとね。大事な日に動けなくなっちゃう」
エヴァはそう話しながら姿勢を正して、身体を伸ばす。
その姿は、先ほどまでの不調を感じさせないようだった。
そんなことを話していると、エヴァの家に着いてしまう。
「じゃぁ、また明日」
「うん、また明日」
小さく手を振るエヴァに僕は小さく頷き、その場を後にする。
自宅へ向かって歩いていると、背後から知っている声が響いた。
「よう、ルイン」
僕はその声に振り返り、正体を確かめる。
赤い空……もう暗くなる空に溶け込むような黒い鱗……
蜥蜴人のシェラだった。
「訓練、やるんだろ?」
「はい、お願いします」
僕はそう答え、頷いた。




