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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第二章:あの日から

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Episode:11 約束と見える星

 シェラと握手をする。

 蜥蜴人(リザードマン)の手は見た目より大きく、僕の手を簡単に覆い、優しく包み込んだ。


「よろしくな」


「はい」


 シェラの言葉に、僕は返事をしながら頷く。

 これが、仲間としての大きな一歩にも感じた。


 直後、背後から聞き馴染みのある声が響く。


「ルイン!」


 僕はその声に振り返り、正体を確かめる。

 視界が捉えたのは、青髪のよく知る人物。

 幼馴染のエヴァだった。


「……エヴァ」


 僕は彼女の姿を見て、目を見開く。

 まだ帰っていなかった……。いや、夢でもそうだ。


 僕はそう考えながら、夢の内容を少しだけ思い出す。

 夕陽が差し込む廊下、そこで軽い言い合いをしたのを覚えている。

 あの夢では申し訳ないことをした。


「知り合いか?」


 シェラが背後で呟く。

 僕はシェラに視線を送り、幼馴染と呟いた。


「幼馴染か、良いもん持ってるな」


「良いもん?」


 シェラの言葉に、僕は首を傾げて顔を見る。

 色彩豊かな爬虫類種独特の瞳は、優しくエヴァを見つめていた。


 エヴァは人混みをかき分け、僕の前に姿を現す。


「ルインー探したよ」


「え? ごめんごめん。なんか用があった?」


 エヴァの言葉に僕がそう答えると、彼女は少し頬を膨らました後に、シェラに気がついた。


「黒い……蜥蜴人」


 エヴァはシェラを見て少し戸惑ったようだった。

 シェラは目付きが鋭く、筋骨隆々の大柄な体格。

 背中に携えた二本の大曲剣は見る者を怖がらせるのに十分だった。


「あ、エヴァ。こちらシェラ」


「シェ……シェ……? あ、お知り……合いの方?」


 僕の説明に、エヴァは後退りする身体を必死に止め、声を絞り出した。

 エヴァの怖がり方を見て、シェラは少し困ったように笑い、しゃがみ込む。


「怖がらせて悪りぃな」


 そう言って、エヴァの前に手を出す。


 握手を求めていると彼女はすぐに理解し、怯えながらもゆっくりと手を出した。

 シェラは満面の笑みを浮かべながらエヴァの手を握る。


 本人には絶対に言わないが、大曲剣を背中に携えた大柄な蜥蜴人が満面の笑みとは......シェラのことを全く知らない人間からするとかなり怖い。

 絶対に言わないけど……。


「俺様はシェラ、よろしくな」


「わ、私はエヴァ……。よ、よろしくお願いします」


 自己紹介をしたシェラに、エヴァは怯えながらも名乗った。

 挨拶を終えたシェラは、エヴァの手を離してゆっくりと立ち上がる。

 そして、僕を見た。


「そろそろ試験も終わるだろ。いつもこんな遅いのか? あと数刻で夜になる」


 シェラは僕とエヴァを交互に見ながらそう話す。

 シェラのその問いに答えたのは、意外にもエヴァだった。


「い、いえ。実技試験自体が珍しい行事なので、帰りが少し遅くなるんです。生徒によっては、両親に迎えにきてもらったり、迎えの馬車を用意していただくこともあると聞きました。最も、私とルインは徒歩で来れる距離ではありますので、馬車などはありません」


 そう話すエヴァを見て、シェラは少し考えてから口を開く。


「徒歩でって、距離はどのくらいだ?」


「んー……一刻(ひとこく)と半から、二刻(ふたこく)あたりかと……」


 それを聞いたシェラが目を開き、眉を歪める。


「今から出て、一刻以上かかるんだろぉ? 危なくねぇか?」


 シェラのその言葉に、僕とエヴァは顔を見合わせ、首を傾げる。

 危ない……。

 そんな認識は持っていなかった。


 シェラは僕たちの反応を見て、ため息を漏らす。


「終わったら俺様が家まで送ってやる。子供二人が夜の街道を歩くなんざ危なくてしょうがねぇ」


 シェラはそう言って窓を見つめた。


 もう少しで夜。

 赤い色の空には、小さな輝きが見えたような気がした。

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