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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第二章:あの日から

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Episode:8 友好の証

 ため息を漏らす鍛人を見つめ、シェラはニヤリと笑った後、口を開いた。

 

「素材が分かったら、真っ先にオッサンに知らせてやるよ」


 鍛人は目を輝かせシェラを見つめるが、恥ずかしかったのか、すぐに仏頂面に戻して咳ばらいをした。


「頼むぜ、蜥蜴人(リザードマン)


「任せろ。鍛人(ドワーフ)


 シェラと鍛人は互いに何かを理解したのか、笑い合いながら見つめ合っている。


「……なんだこれ」


 僕はその光景をただ見つめながら、小さく声を漏らした。


 直後、シェラは僕に視線を移し、すぐに鍛人を見て、口を開いた。


「オッサン、この直剣をこいつに、金は俺様が払う」


 シェラはそう話し先程褒めた剣を指差す。

 鍛人はシェラの言葉に目を見開き、僕を見た。


「蜥蜴人、お前さん本気か? 魔術が浸透した世界で、剣を買うなんて……。武器を作ってるワシが言うことじゃあないが、お勧めは出来ねぇ」


「いいんだよ。魔術が中心だからこそ警戒されねぇし、甘く見られる。それに、ただの剣にだって魔術を込めりゃ粗悪品から一転、最高級の武器になる。オッサン、アンタは鍛造の技術は鍛人の中でもかなり上位だろ? 打てんじゃねぇのか、魔力が込められた武器を」


 その言葉に、鍛人の目付きが変わる。


「魔力……魔剣のことか……。ありゃ、ちょっとやそっとでどうこうできる代物じゃねぇ。だがまぁ……そうだな。普通の武器の需要はもうねぇ、魔剣の鍛造も視野に入れて動くか……」


 そう呟きながら考える鍛人を見て、シェラはニヤリと笑う。


「で、オッサン、この剣はいくらだ」


 シェラの言葉に、鍛人は剣を見つめる。

 そして、何かを決心したのか頷いて僕とシェラを見つめた。


「それはくれてやる。金はいらん。鞘も適当なものを持っていってくれ」


「いや……だが」


 鍛人の言葉に、シェラ戸惑ったように見えた。

 初めて見せた戸惑いを、僕は少し微笑みながら見つめる。


 態度も、口も悪いが、おそらく悪い人ではないと、そう実感した。


「良質な骨の武器、新たな選択肢。ワシに価値のあるものを見せ、見つけ出してくれたからの。その礼とでも思ってくれ」


 鍛人はそう話し、優しく微笑んだ。

 仏頂面の先程までとは違い、どこか満足したような、そんな表情をしていた。


「そうか……ならありがたくいただくぜ」


 シェラはそう話し、剣を拾い上げ、近くにあった箱の中から適当な鞘を選び刀身を納める。

 それを、僕に差し出してきた。


「友好の証ってわけじゃないが、鍛人のオッサンと、俺様から」


 差し出された剣に僕は目を向ける。

 剣……


 ゆっくりと手を伸ばし、受け取る。

 両手に金属の重みが感じられ、少し前に姿勢が傾く。


「……重い」


 知らなかった。

 剣がこんなに重いことを。

 見た目以上にはるかに重く、命の奪い合いに扱うには酷く鋭い。


「大事に使ってやれ」


 シェラは僕の目を見てハッキリそう言った。


「…………はい」


 僕の返事に、シェラは優しく微笑む。

 その表情には、どこか寂しさのような物が含まれている感じがした。


「ガキンチョ、蜥蜴人」


 鍛人の声が耳を刺し、僕とシェラは視線を移す。


「なんだ」


「死ぬなよ」


 鍛人がポツリと呟いたその言葉は何よりも重く、何よりも心がこもっていた。


「ありがとうございます」


「おう」


 鍛人の言葉に、僕とシェラはそう答える。

 その答えに満足したのか、鍛人はガハハと大きく口を開け笑う。

 

 廊下に響く笑い声を聞きながら、手に握る剣を握り直す。

 その剣は、はるかに重い。

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