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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第二章:あの日から

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Episode:7 知らない世界

 蜥蜴人(リザードマン)が入って行った校舎を見つめ、僕は安堵の息を漏らす。


 シェラと名乗った蜥蜴人の目的は、わからないまま。


 男性教師が地面からバインダーを拾い上げ、紙をパタパタとして砂を落とす。


「いやぁ、怖かったねぇ」


 男性教師はそう話した。

 声は明るくて、笑顔。

 身体のどの部位にも震えが見られない。

 場を和ませるための言葉か、真実かはわからないが、場の空気が軽くなるのを感じた。


「よし、ルインは合格だから、あとは自由にしていていいぞ。あ、学校の敷地からは出るなよー」


 男性教師にそう言われ、僕は少し頭を下げて校舎を目指す。

 予知夢……。もっとも、もうすでに外れてしまったが、予知夢では試験に失敗し、魔力切れで気絶していたから、ここから先の事はわからない。

 それだけで、少し楽しいような気もする。


 校舎に入り、鍛人(ドワーフ)がいた廊下を歩く。

 すると、知っているあの声が耳を刺した。


「お、客じゃねぇ兄ちゃんじゃねぇ!」


「その呼び方はやめてください」


 鍛人の男はガハハと大きく口を開け、自身の膝を強く叩きながら豪快に笑う。

 先ほどのことをまで根に持っているのだろうか。


「どうですか? 商売というか、売れ行きの方は」


「全然ダメだなぁ、こりゃ。魔術師ばっかで剣なんか売れりゃしねぇ。こりゃワシも魔術師が扱う武具に変えっかなぁ」


 鍛人の男は長い髭をさすりながらそう話す。

 声色はあまり険しくなく、緊急性を感じないが、眉間にはシワがより、眉を歪めて唸っているのを見ると、かなり悩んでいるようにも見える。


「……武器でも買うのか、ルイン」


 重い足音が背後で止まり、低い声が僕を呼ぶ。

 気配がなかった背後からした声に、僕はすぐに振り向いて姿を確かめた。


 視界が捉えたのは、僕の二倍の高さはあるであろう黒い鱗の蜥蜴人。

 シェラの姿だった。


「……シェラさん」


「シェラでいい」


 シェラはそう話し、色彩豊かな瞳を、僕から廊下の床に置かれた武具に視線を移した。


「武具を買うのか? 剣が欲しいのか? ルイン」


「いえ、ただ見ていただけです」


 僕がそう話すと、シェラはその場にしゃがみ込み、床に並べられた剣を見つめた。


「なんだ、お前さん、もう担いでるだろ。立派な大曲剣(だいきょくけん)を」


 鍛人の男がシェラの背中にかけられた大きな曲剣を睨みそう話すと、シェラはため息を漏らしながらドワーフを見つめた。


「いいだろ、見るくらい。それとも、何か問題があるのかぁ?」


「……っち。好きにしろ」


 シェラの睨みに、鍛人は機嫌を損ねたように大きなため息を漏らしながら頬杖をついた。


「良い剣だ」


 シェラはそう話して一本の剣に目を向ける。

 その言葉に、鍛人は一瞬だけ頬が緩んだが、すぐに見慣れた仏頂面に戻ってしまう。


「世辞はいい……背負ってる大曲剣はかなりの物だろう。それに比べれば甘い」


 鍛人の言葉に、シェラは背負っている大曲剣の一本を手に持ち、鍛人に見せる。

 その剣を見た瞬間、鍛人の表情が見違えるほど明るくなった。


「……これは……金属じゃないのか……。骨を削って作ったな? こんなに精巧なものは初めて見た……」


 子供の様に目を輝かせる鍛人を見ながら、僕は首をかしげ口を開く。


「そんなにすごいものなんですか?」


「あぁ、骨を削る武器は歴史が長いんだが、壊れやすく、加工も難しい。一度壊れれば修理もほぼ不可能に近い、そのせいか次第に廃れていった。これほど大きく、かつ頑丈な骨の武器は、この世界に数本あるかどうか……死ぬまでにお目にかかれるかどうかもわからん。良いものを見せてもらった」


 鍛人の話を聞きながら、僕はシェラが握る大曲剣に視線を移すが、素人目にはよくわからなかった。


「なんの骨だ?」


「さぁな」


「そうか……」


 シェラの言葉に、鍛人はわかりやすく肩を落とす。

 僕は二人だけで展開されている世界を見つめながら、小さくため息を漏らした。


 武器の事はわからない……。

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