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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第二章:あの日から

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Episode:5 知っている一日5

 学校の校庭、試験会場に着いた僕は、自分の出番が来るのをただ待っていた。


「来たぞ……初級魔法も使えないルインだ」


 周りからそんな声が聞こえた。

 だが、今回の僕はそんなこと気にしない、すでに言われる言葉を知っていればあまり気にもならなかった。

 まぁ……最も、もう言われ慣れているせいか、あまり気にしてはいない。


「来たかルイン! 先生はお前に期待しているぞ!」


 周りから投げられた言葉の刃とは違い、試験官の男性教師は僕の味方をする。

 

 僕はそれを聞いて、少し頬が緩んだ。

 それと同時に一つだけ気が付いたことがあった。


 心まで、予知夢と同じなのだと。

 

「よし、ルイン始めるぞ!! 位置につけ!」


 教師の指示で僕は校庭の真ん中に立ち、眼前に置かれた訓練用人形を睨む。


「準備ができたらルインのタイミングで魔術を使ってみろ!!」


  教師はにこやかに笑い、そう叫んだ。

  現実では失敗しない……。


「早く撃てよ、ルイン!!」


 同級生のそんな声が耳に刺さる。

 その声に僕は少しだけ笑って、右手を前に出した。


 もし、すべてが予知夢と同じなら、この後の事も予想ができる。

 だったら、失敗もしなくて済むかもしれない、家にこもらなくて済むかもしれない。

 あの夢が、僕に勇気を与えた。


 目を瞑り、頭の中にイメージを浮かべる。

 魔力を調整しろ。

 僕はできないわけじゃない……苦手なだけだ。

 目に見えないくらい……自身ですら気が付かないくらいの変化を……。


 瞬間、頭の中に軽い水音が響いた。

 小さな滴が水面を撃つような、軽く綺麗な音。

 その音をゆっくりと増やすように、魔力の蛇口を捻る。

 力を込めて、ゆっくりと……ゆっくりと。


「いいぞ、ルイン!」


 その状態を見て、教師が喜ぶ。

 

 この世界は魔術でできている。

 剣術では世界を生きていけない。


「ルイン、そのまま集中!」


 教師のその言葉と同時にゆっくりと目を開け、詠唱を開始した。


ディア(炎よ)フィルト(射出せよ)


 その言葉と同時に、ほかの生徒からあの知らせが届いた。

 僕の放った火球は、まっすぐと訓練用人形に向かっていく。

 下級も下級……。取り敢えずは、と言ったところだろうか。

 その軌道を最後まで確認しながら、知らせに耳を傾けた。


「さっきの岩人(ゴーレム)、黒い蜥蜴人(リザードマン)が剣で破壊したってさ。もう安心だ」


「マジ!? 化け物すぎるだろ」


 この知らせ……。

 夢の中の僕は、この知らせで集中が乱れ、試験に失敗した。

 知っていれば、驚かなければ、集中できていれば、簡単な試験だったのだ。


 僕は焼け焦げた訓練用人形を見つめてため息を漏らす。

 そのため息は疲労を含んだ、安堵のため息だ。


「……ルイン!!」


 直後、男性教師が僕の背中を叩いた。


「やっぱりお前はすごい!! 先生は信じてたぞ!!マジで……」


 泣き出しそうな教師の顔を見上げながら、僕は苦笑いをする。


「先生……大げさですよ……」


「いや!この世界は魔法がすべてと言っても過言じゃない、お前は特殊な体質だしな、心配してたのは本当だ……よく頑張った。これからもがんばれよ、俺はお前がすごい魔術師になると思ってる」


 教師は真剣な眼差しで僕を見つめ、そう話した。

 

「ありがとうございます」


 僕は教師にそう言った。

 喜びを隠して……。

 少しだけ自信が付いて、前に進めたような気がする。

 だが、それと同時に、少しだけの不安もある。

 おそらく、これで予知夢の範囲から外れてしまっただから……。


「変わった魔力だなぁ……。匂うぜぇ……」


 重い足音を立てながら、黒い蜥蜴人が現れる。

 その口はニヤリと笑い、瞳は闘争を求めている。


 予知夢から外れた世界……僕はこの先を知らない……。

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