Episode:7 原因
僕は、周りの風景、建物を確認しながらゆっくりと口を開く。
「ティリアの話すことが本当で、ディジーの言葉の可能性を含めると、魔術を使った何者かが、宿に侵入して僕たちを殺害した……。そういうことですか?」
僕の言葉に、ディジーとティリアは頷いた。
「ですが、僕たちは宿の話をしていません。決めたのは酒場を出てからでした」
僕がそう話すと、横に立つシェラが口を開いた。
「だったら、その酒場で誰かに目をつけられたんだろ」
シェラはそう言ってため息を漏らす。
「何か変わったことはなかったのかい?」
ディジーは銀髪を揺らし、腕を組みながら話した。
その言葉に、僕は少し考えて口を開く。
「確かに、酔っぱらった冒険者とシェラが言い争いになりかけましたが、それだけで殺しますか?」
その言葉に、シェラの目つきが冷たくなる。
「冒険者ってのは、特性上血気盛んな奴が多いんだよ。ありえない話じゃねぇ……」
シェラはそう話す。
だが、考えることはやめていなかった。
そうは言いつつも、シェラ自身も、可能性は少ないと見ているのだろう。
そしてもう一人、その線を考え、自身で拒絶した者がいた。
「可能性はなくはないと思うけど……それでも限りなく低いんじゃないかい?」
そう話したディジーは、僕を見つめて真剣な表情で話を続ける。
「こんな広い街。それも、当然表れて偶然喧嘩になっただけの冒険者を殺すなんて、危険ばかりで利益が出ない。無駄だよ」
ディジーが話したその言葉に、シェラも頷いていた。
「だとしたら?」
僕はそう話す。
結論がなかなか出ない現状に、少しばかりの焦りを覚えていた。
「だとしたら……」
「だとしたら、もっと大きい組織ニャ。人を殺すことに特化した、また別の。あの酒場には仲間がいて、ティーちゃんたちを見つけたから、伝達した……と考えるのが妥当だと思うニャ」
ディジーの言葉を遮り、ティリアはそう話した。
略奪者ゆえの視点も活きているのだろう。
「でも、そんな組織がこの街にいるなんて……」
僕は少し考えた後、ある記憶が脳裏を駆け巡った。
「バルド……?」
僕が呟いた言葉に、シェラの目が細くなる。
「ありえねぇ話じゃねぇな。誘拐して人身売買をするにも、拠点となる街は一時的にでも必要になるはずだ。バルドが率いていたのか、バルドが下っ端かわからねぇが、この街に仲間がいる可能性はありそうだ」
そう話すシェラは瞳孔を細くして、周囲の警戒に入る。
今、現状で一番可能性が高いと判断したのだろう。
全員が周囲に警戒を向け、視線の動きが忙しくなった。
「なら、どう行動する? ルイン」
ディジーが僕を見ながらゆっくりと話し始めた。
「街中に敵がいるなら、もうバレてるかもしれない。もちろんバレてない可能性もあるが、何が原因でバレたのかわからない以上、別行動とかは危険だよ」
ディジーはそう話す。
間違いのない意見だった。
それに答えたのは、僕ではなく、シェラだった。
「もうバレてるんならよぉ? ――やり合おうぜ。どうせ逃げても追ってくんだからよ」
そう話すシェラを、ディジーとティリアが睨んだ。
「相手は黒曜級複数人に対して襲撃するような連中だよ? どれ程の戦力があるかわからない以上、闘うのは得策とは言えない」
「ティーちゃんもそう思うニャ、略奪者は奪ってからが仕事の始まりニャ……確実に勝てる相手だけを狙って来るはずニャ」
ティリアのその言葉を聞いて、シェラの眉が歪む。
「つまり、こう言いてぇのか? 俺様が、俺様たちが、確実に勝てると思われてるほど弱いって」
「そ、そうじゃないニャ」
凄んだシェラの顔を見ながら、ティリアは訂正する。
ここで止めなくては、シェラは暴走してしまうだろう。
「シェラ、少し待ってください」
僕が発した言葉に、シェラは眉をさらにキツく歪め、僕を睨む。
「――なんだよ」
「もし、まだ僕たちが見つかっていないなら、何も起きないのが一番です。戦闘し、今後の旅に影響を与えるのが今は一番避けたいんです」
そう話すと、シェラは拳を強く握ったが、すぐに力を抜き、ため息を漏らした。
「だが、もし戦闘になったら暴れるぞ?」
「はい、その時はド派手にお願いします」
僕がそう答えると、シェラはニヤリと笑った。
「で、どうするんだい?」
ディジーは話しながら腕を組み、僕を見つめる。
「方針を決めなきゃ、動けないじゃないか」
ディジーのその言葉に僕は少し考え、結論を出した。
「酒場に行きます」
僕の提案に、全員が目を見開く。
殺される原因となったかもしれない酒場に、もう一度行こうと話しているのだ。
そんな顔をしてしまうのも無理はない。
「なんで……」
「まず、何が原因で殺されたのか、それを知る必要があります。もし、ニフニルに入る前に原因を作っていたなら、それを解消する動きをしなくてはいけません」
僕がそう話すと、ディジーは目を瞑り、唸る。
「あまりいい策とは言えないが……ルインの言っていることも理解はできる。試してみる価値は……あるか」
ディジーは葛藤しながらも、結論を導き出した。
「いいよ、アタシは賛成だ」
ディジーは眉を歪めながらもそう話した。
その言葉に、シェラと、ティリアも頷く。
「では、行きましょう」
そうして、僕たちは酒場を目指した。




