表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第九章:境界線

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

134/142

Episode:6 あの場所へ

 王都に着き、エヴァを見つめる。


「ルイン?」


「エヴァ、早く行こう。用を思い出した」


 僕はそう言って、エヴァの手を取って歩き出す。


「――え」


 エヴァは少し照れた様子で後をついてきた。

 彼女にとっては初めてだろう。

 だが、僕にとっては、何回か繰り返した内の一回になっていた。

 

「まだ、ルインの出番には早くない?」


 エヴァは抵抗しないながらも、そう話す。

 握った手に力が入り、戸惑いを伝えた。


「僕が用事あるんだ」


「な、なるほど」


 僕の答えに、エヴァは曖昧に返事にをする。

 その声は震え、事態を理解するために頭を使っているように見える。


 土足のまま校舎にはいり、エヴァと別れる。


「また後でね」


「僕を見つけられなかったら、そのまま帰っていいから。僕の親には心配しないでって伝えておいてくれると助かるな」


「えー、なにそれー」


 エヴァは眉を歪め、そう話す。

 僕が言ったことを、なんでそんなことを。と、そう言いたげな顔で僕を見つめるが、それ以上は言わなかった。


 小さく手を振り、それぞれの道に歩き出す。

 僕は、三日目を目指した。


 階段を上がり、廊下の隅に向かう。

 壁に体重を預け、深呼吸した。


「ふぅー」


 息を吐くと同時に、全身から魔力を溢れさせる。

 シェラが、ディジーが気がつけば良い。

 だが、これにも一つの確信がある。

 アーガスを守れなかったシェラは、次こそはと強者を探している。

 初めてシェラと会った時、彼は僕の魔力は臭く重いと話した。

 誘われないはずがない。


「ここかぁ?」


 シェラは視界の端、近くの通路から体を出した。


「――え?」


 予想外。

 いつもなら、喧嘩の仲裁をしているシェラに声をかけていたが、魔力で誘い出した場合、想定していない動きをシェラがするのは、考えればわかることだった。


 爬虫類特有の色彩豊かな瞳が僕を睨み、瞳孔が刃のように鋭く細くなる。


「オメェ、匂うなぁ」


 シェラの顔が眼前に迫り、鼻息が顔にかかる。

 そんなシェラに僕はため息を漏らし、合言葉を話した。


「エリクト」


 僕の発したその言葉に、シェラは身を引き、眉を歪める。


「名前は?」


「ルインです。なんか、話には聞いていましたが、本当に魔力の匂いに誘われるんですね」


 僕がそう話すと、シェラは僕を睨み、ゆっくりと口を開いた。


「気づいてねぇのか? オメェの魔力は、普通のとはチゲェ。長年熟成、発酵させたような、体に重くのしかかる歪な匂いだ。そこまで眠らせた魔力は、魔術は、さぞ強力なんだろうな」


 シェラはそう言ってニヤリと笑った。

 そう話す彼をみて、僕は少しだけ肩の力が抜けた。


「そうですね」


「じゃあ、行くか」


「あ、ちょっと待って」

 

 そう言って、僕はディジーとティリアのことを話した。



 そうして、迎えた二日目。

 魔術都市ニフニルにて……。


「酒場だろ? なら食事に毒?」


「遅効性の毒ならあり得るが……眠ったまま死ねる毒は現状存在しないよ」


 シェラが話した言葉に、ディジーが答えた。

 銀髪の髪が揺れ動き、紫色の瞳が僕を見つめる。


「ティリアはどう思いますか?」


 僕はティリアに視線を移し、ゆっくりと問いかける。


「ニャッ……。万が一、ディジーの話す毒があったとしても、獣人(アニマ)の鼻は騙せないニャ。また別の方法じゃニャいかニャ」


 ティリアはそう言って、僕から視線を外す。

 その瞳はあらゆる家屋を見つめ、ため息を漏らした。


「どうしました?」


 桃色の髪が揺れ、耳がパタパタと動く。

 桃色の瞳は些細な物でも見逃さないと、瞳孔を開き情報を集めていた。


「いニャ……どこのお家も侵入しやすそうニャ」


 そう話した時、場の空気が少しだけ重くなる。

 

「でも、木造の宿は木が軋んでいました。流石に気づきますよ」


「魔術で音を消していても気づけるのかニャ?」


 僕の言葉に、ティリアはそう話した。

 確かに、魔術が関与しているならひっくり返る推論だ。


 僕はディジーに視線を送る。

 その視線に気がついたディジーは、小さくうなづいていた。


 音を消す魔術は存在する。

 斥候に、消音の魔術。

 だとしたら、敵は一人じゃない……?


 僕は、周囲に目を向けながら、深呼吸をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ