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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第九章:境界線

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Episode:3 内と外

 門をくぐると、明るい街並みが僕らを歓迎した。

 街灯は全て宙に浮き、色とりどりの光を発する。

 赤、青、紫、黄色。

 その鮮やかな光が街を彩っていた。


「……すごいですね。外からじゃわからなかった」


「多分、認識阻害魔術だね。あまり見ないし、かなり希少な魔術だ。それがあれば、どれだけバカでかい兵器を所有していようが、壁の外からは確認ができない。さっきも言ったように、使う人間はかなり少ない。アタシも見たことがないしね……。そんなものに対策できる奴なんかいないさね」


 僕の言葉に、ディジーは空を見上げながら話した。

 認識阻害、多種多様な街灯。

 ディジーはその一つ一つを目に焼き付け、知識を蓄えようとしているようにも見えた。


「にしても、マジでデカい都市だな。ちと小さく見えたのも、魔術か?」


 シェラは首を回し、街並みを睨みながら話す。

 彼だけが、初めて訪れたこの都市に対しても、警戒心を出していた。


「認識阻害とはまた別。認識反転魔術。思い込みを、反転させたのさ」


 ディジーがそう話すと、シェラはため息を漏らす。


「どう違う?」


「詳細を話してもわからないだろう? だから、簡単に説明するさね。認識阻害は、そこにある物を誤認させる。これは物体が必要さね、リンゴを、バナナにして見せるのが、認識阻害。認識反転魔術は、実体を必要としない、そこにある物が消え、ない物が現れる魔術さ」


「だが、都市が小さく見えたのは、反転魔術だろぉ? 実体がある以上、阻害じゃないのか?」


「いや、大きく見えていた外郭を消して、小さく見せたのさ。反転。それに、反転魔術は、実体があっても作用するのさ」


 ディジーが得意気にそう話すと、シェラは頭を抱え、眉間を掻く。

 どうやら、理解できていないらしい。


「難しいな」


「だろう?」


 シェラとディジーはそう話しながら、店を物色していた。


「取り敢えず、もうメシ食うか?」


 シェラは振り向いて、僕とティリアに問う。


「だね……。夜になると、冒険者で酒場が溢れかえる。どこも満杯とは行かないだろうが、それでもかなり待つと思うよ」


 ディジーはそう話して、酒場を探し始める。

 そんな姿を見ながら、僕はただ後ろを歩いていた。


 しばらく経つと、シェラとディジーが何かを指差した。

 視線を向けると、そこは酒場で、シェラとディジーはこちらに視線を向ける。


「ここでいいんじゃないかい? 食べて、それから明日の準備をしよう」


 ディジーはそう話し、僕たちの答えは待たずに扉を開けた。


 カランッ


 そんな音が鳴り、扉が開く。

 木杯がぶつかり合う音と共に、ワイワイと楽し気な声が飛び込んできた。


「よっしゃぁ! 今日は奢りだぁぁぁぁ!」


 椅子に足を乗せ、両手剣を背負った男が声高らかに宣言をする。

 そして、木杯の中を空にし、勢いよく卓に置いた。

 直後、彼はこちらを見て眉を歪める。


「ほー……。蜥蜴人(リザードマン)に、褐樹人(ダークエルフ)……人間のガキに、獣人(アニマ)か、変わった組み合わせだな」


 男は僕たちを値踏みするように見つめた。

 直後だ、酒場にいる誰かが、声を上げる。


「多種多様な種族が揃って、人間のガキを囲ってやがる。ガキは愛玩用か……?」


 その言葉に、周囲は嘲笑した。

 嫌な雰囲気、社会に生きる物なら、必ず味わう気持ちの悪い雰囲気が場を包む。


 だが、僕たちを値踏みするように見つめた男だけは、眉を歪め唸っていた。


「違う、違うなぁ」


 男はそう話し、ニヤリと笑って僕に視線を合わせる。


「お前だろ、ガキ。この組み合わせを操ってるのは……中心は、お前だ」


 そう言って、男は僕を指差した。

 直後だ、シェラは一歩前に出て、男の肩を叩く。

 そして、一言小さく呟いた。


「あぁ、正しい解答だ。だから、コイツに指一本でも触れるなら、殺すぜぇ?」


 シェラの放ったその言葉に、場は静まり返る。


「――コイツら!」


「やめとけ!」


 酒場の中に、怒号が響く。

 誰の声かは分からなかった。


「この人数に喧嘩を売るんだ。並の冒険者じゃねぇ……」


 誰かの発したその言葉に、シェラ、ディジー、ティリアは等級章を取り出す。

 それを見た直後、嘘のように場が収まり、先ほどまでの空気を取り戻した。

 だが、恐怖で鎮めた場は、どことなくぎこちなく、気まずい。


 シェラは歩き出し、空いている卓の椅子に腰を下ろす。


「さ、飯だ」


 シェラはそう話して、品書きに目を通した。

 周りの人間の大半は、冒険者だろう。

 こちらを見て、何か小さく耳打ちをする姿も見える。

 居心地の悪い空間。


 僕はそんな状況を噛み締めながら、ため息を漏らした。

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