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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第二章:あの日から

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Episode:2 知っている一日2

 空を見上げるエヴァの横顔を見ながら、僕は夢の事を細部まで思い出すために思考を巡らせる。

 すると、エヴァは僕を見つめた。


「行こうか、遅刻しちゃうし」


「そ……そうだね」


 エヴァの言葉で僕は歩き出す。

 人の間を縫うようにすり抜けた。


 七日後に控えた王都の祭りと、実技試験で人が溢れかえっている。

 これも、同じ状況だった。


「早いよールイン!!」


「エヴァが遅いんだろ」


 僕がすり抜けるのがうますぎたせいか、エヴァが付いてこれていない。

 振り返ると、すでにエヴァの姿は見えなくなっていた。


「エヴァ……」


 これもあった。

 覚えてる。

 覚えてるぞ……。


 僕は人混みの中に体を捻じ入れ、エヴァの姿を探す。

 これだけありとあらゆる人種が溢れかえるとなると、簡単には探せない。

 

「クソ……やっぱり人がおおい!!」


 僕は歯を食いしばりながら人混みをかき分ける。

 すると、抜けたのだ。

 スポンッと音を立てながら抜けるように、僕の体は人混みからはじき出される。


「やっと抜けた……エヴァは……っ!」


 僕は人混みを一瞥した後、視線を前に向けると、真っ黒い何かにぶつかる。


「あぁ、すまない。大丈夫かい?」


「すいません、ありがとうござ…………」


 僕は目を見開く。

 倒れそうになった僕の体を支え、肩を叩く老婆は、夢の中とまったく同じ格好をしていた。


「怪我はないかい?」


「............はい、大丈夫です」


 僕の言葉に、老婆は首をかしげる。


「少し不安を感じる声だね?念のため、怪我が無いか確かめるから」


 老婆はそう話し、僕の額に手を当てる。

 額がじんわりと温かくなり、少しばかり心地いい気がした。


「私がもっと早く気が付いていればねぇ」


 老婆は申し訳なさそうに呟いた。

 その声色には謝罪の念ではなく、寂しさなども籠っているような気がした。


「いえ……僕も、よそ見をしてました」


 そう話すと、老婆は優しく微笑む。


「うん、異常はないみたいだ。ごめんね、私は急いでるから」


 そう言って老婆はフラフラと人混みに紛れていく。

 僕はその後ろ姿を見送った後、踵を返し、エヴァを探そうと一歩を踏み出した。

 その直後、背後から老婆の声が響く。


「申し訳ないねぇ……ルイン」


 その声は聴き間違える訳もなく、まぎれもなく老婆の声だった。

 

 また同じ状況......僕は名前を教えていないのに……。

 直後、鳥肌が立ち、気味の悪さに体が震える。

 予知夢なんかじゃない…………なんかおかしい感じがする。


 得体のしれない恐怖に、汗が滲みで出る。

 先ほどまでの万能感や、楽しさとは一変、恐怖だけが確かに刻まれた。


 早く……早くエヴァを見つけなくては……。


 人混みに目を凝らし、小さな目印でもないかと躍起になる。

 十五の僕の身長では見渡せる範囲にも限界があった。


 直後、背後から耳になじみの声が聞こえた。


「ルイン?」


 僕は振り返り、正体を確かめる。

 そこに立っていたのは確かに、見失ったはずの青髪の少女、エヴァだった。


 エヴァは近くの屋台で買ったであろう食べ物を頬張りながら僕の前に立つ。


「……エヴァ!!」


「にゃにを……何をそんなに慌ててるの?」


 エヴァは状況が掴めていないような表情で僕を見つめる。


「大丈夫か?」


「大丈夫って……何が?」


 エヴァは僕の顔を見ながら首を傾げ、眉を歪める。


「大丈夫かどうかって問題なら、ルインの方がやばいよ……」


 エヴァはそう言いながらポケットから鏡を取り出し、僕の顔に向ける。

 そこには、焦りが隠しきれていない少年が映っていた。

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