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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第九章:境界線

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Episode:1 魔術都市

 森から街道に出る。

 と言っても、ほぼ森で、街道というよりは獣道に近い。


「昼過ぎ……あまりチンタラはしてらんねぇなぁ」


 シェラが木々の隙間から空を見あげ、目を細めながら呟いた。


「ルイン……少し走れるか?」


 シェラの言葉に、僕は頷いた。


「はい、問題ありません」


「よし、ディジーとティリアは?」


 僕の答えに、シェラはニヤリと笑って、後ろを歩いている二人にも同じ問いをぶつけた。


「アタシも走れる」


「ティーちゃんも問題ないニャ」


 その言葉を耳にした直後、シェラは走り始めた。

 合わせる気など初めからなく、競争にも近い出だし。

 だが、ディジーとティリアはそれに反応し、走り出していた。


「えっ?」


 小さくなる背中を見て僕は歯を食いしばる。

 怒りではない。

 だが、出し抜かれた。

 やられた。

 という気持ちが大きく渦巻いた。


「――絶対追いつく!」


 ―― エルナ(風よ)フィルト(射出せよ)


 僕は詠唱を始め、手のひらを後ろに向ける。

 手のひらから射出された風の魔術は、僕の体を浮き上がらせ、飛ぶように前へ押し出した。

 魔術を圧縮、射出ではなく、継続的な放出。


 初速だけが速くても、いずれ減速して追いつけない。

 だから、継続的に風魔術を出し続け、速度を上げ続ける必要がある。


「なら……エルナ(風よ)フルール(連鎖せよ)


 詠唱後、手のひらに魔力と大気が集結する。

 まるで、周囲のものを吸い込む何かが取り付けられたかのように。

 そして、放出!


 直後、身体が一瞬だけフワリと宙に浮き、加速する。

 この手法だったら、シェラ達に追いつくのは容易だった。


「うっひょーキタキタ!」


 追いついた僕を見て、シェラが楽しそうに話す。

 すごい技を見た子供のように、太い尻尾を振りながら喜んでいた。


「流石だ。継続的な放出……。連鎖を意味する、フルールかい?」


「はい、ディジーの炎の魔具から着想を得ました」


 僕の解答に、ディジーは優しく笑った。


「流石だな」


 それだけで、最大の賞賛だと、僕はわかっていた。


「で、なぜそんなに急いでいるんですか!?」


 僕は、この状況を作り出したシェラに問いかける。

 その問いに、シェラは僕に一瞬視線を向け、前を見る。


「少し行けば、街がある。忘れていたがな。森の中で野営するよりかはマシだろ」


 シェラがそう話すと、ディジーが口を開いた。


「魔術都市ニフニル。大陸最大の魔術国家にして、魔術発祥の地さね」


 ディジーのその言葉の直後、森を抜け視界が晴れる。

 場所は崖の上。

 先ほど聞いた魔術都市ニフニルを見下ろす形となった。


「……すご」


 僕は、気がついたら呟いていた。


「森のど真ん中に隠すように点在しているため、馬車などでの通行は不可能とされ、冒険者もあまり寄り付かない。シェラも、アタシも、存在を忘れていたよ」


「俺様は覚えてたけどな」


 不貞腐れたように唇をとがせるシェラを見つめ、ディジーはため息を漏らす。


「で、崖ですね。下に行ってからも、かなり歩きそうな距離ですが、迂回する道はあるんですか?」


 僕がそう話すと、シェラはニヤリと笑った。

 その表情を見て、ティリアは怯えた表情になる。


「嫌ニャ」


「はぁ……」


 ティリアの拒絶の言葉と共に、ディジーがため息を漏らす。

 何か、気づいている様子だ。


 シェラは勢いよく僕達の隙間を縫うように走り、振り返り様に悪い笑みを浮かべる。


「じゃあ、死ぬなよ」


 その言葉の直後、身体が浮遊感に包まれた。


「尻尾!」


 シェラの尻尾が身体を叩き、崖から弾き出したらしい。

 

「ふざけんニャァァァァァ!」


 ティリアの叫び声を聞きながら、迫る木々と、地面を見つめた。

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