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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第八章:欺瞞

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Episode:29 仲間

 ――ルイン


 服を掴み、ティリアはゆっくりと力が抜けたように滑り、そのまま座り込む。


「それで……」


 初めに口を開いたのは、意外にもシェラだった。


 僕は彼を見つめ、ディジーもシェラに視線を移す。


「母親は、見つけたのか?」


 シェラの問いに、ティリアは小さく首を振った。


「まだニャ……まだ、見つけてニャい」


 その声は弱弱しく、意志の強さなどは見えない。

 小さく見えてしまうほどに、ティリアは弱く見えた。


「なら……」


 そう言いながらシェラは歩き出す。

 そのままゆっくりとティリアに近づき、しゃがみ込む。


「見つけないとな、見つけて、殺すぞ。取り戻すんだろ?」


 その言葉を話したシェラの顔は怒りに満ち溢れ、色彩豊かな瞳には狂気に近い何かが芽生えている。


「――っな」


 その顔を見たティリアは目を見開き、少しおびえたような表情をした。


「……魔剣、拾ってくるわね」


 ディジーはため息を漏らしながら歩き出し、バルドが持っていた魔剣の回収に動き出した。


「ルイン……」


「話はあとです。取りあえず、捕らわれていた人たちを開放しましょう」


 僕はそう言って歩き出す。

 バルドの団体が商品として売り飛ばすために確保した捕虜は、一目では人数が把握しきれないほど多かった。


「ティリア……手伝ってくれますね?」


 僕は振り向き、泣き疲れたように顔を伏せたままのティリアに声をかけた。


「……わかったニャ」


 ティリアはそう答えて、ゆっくりと立ち上がり、歩き出す。

 僕はその姿を確認して、前を向いて歩いた。

 捕虜に近づき、縛り付ける縄を切っていく。


「あ、あの……」


「いいです。今は……何も言わないでください」


 助けた女性が何かを話そうとするのを、僕は制止してほかの人間の縄をほどいていく。


「お姉ちゃん、ありがとう」


「……うん」


 少年がティリアに、礼を言ったが、ティリアは力なく頷くだけだった。

 荷馬車から捕虜が解放され、各々が散らばる。

 だが、大半は父親の死体を探すものばかりだった。


「……あなた……」


「パパ……」


「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 悲痛な叫びを聞きながら、僕は歯を食いしばる。

 あふれ出しそうなものを飲み込み、拳を握った。


「ルイン」


 そんな僕に、視界の外からディジーの声が響いた。

 僕は視線を向け、彼女の姿を確認する。

 右手にはバルドが使っていた双斧が握られていた。


「ディジー……」


 僕は彼女の名前を呼ぶ。

 ディジーは僕に視線を向けず、泣き喚く村人たちを見つめながら口を開く。


「変わった魔剣だ。セル・ゴロンの強震の双斧……接触部位から正面に衝撃を飛ばす魔剣。金騎士でうまく防げたのから察するに、刃の移動距離がそのまま衝撃の強さに影響する魔剣だろう」


 そう言いながら、ディジーは外套の中に魔剣をしまい込む。


「それは、その魔剣どうするんですか?」


 僕がそう話すと、ディジーは淡々と答える。


「持っていくさ。使える物は使わないとな……。魔剣は希少だし。だから……」


 淡々と答えていたディジーだが、僕に視線を向けたところで口が止まった。


「大丈夫かい?」


 ディジーが話したことに、僕は村の惨劇に視線を向ける。


「腐りそうです……」


 僕のその言葉を聞くと、ディジーは優しく笑った。


「しっかりと見ておくんだ。腐りそうならアタシ達が助けてあげるさね」


 ディジーのその言葉に、しっかりと惨劇にを向ける。

 炎上した家屋、首のない死体。

 生きていても傷だらけの村人、泣き止まない子供……。

 

「はぁ…………」


 深呼吸さえも震えてしまう。

 拳を握り、歯を食いしばる。


「吞まれるな。でも、なくすな」


 ディジーのその言葉に、僕は彼女を見る。

 そして、彼女の姿を見て目を見開いた。


 ディジーは惨劇を見て、眉を歪めている。

 歯を食いしばっているわけでもない、拳を握っているわけではない、それなのに、なぜか纏う空気が重苦しい。

 少し経って、ディジーは口を開いて、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「殺してやる」


 ディジーはそう呟いて、深呼吸をした後に歩き出した。

 まるで、何もなかったかのように。


「……行くよ、ルイン」


「え……」


「止まってる時間なんてないんだろう? あと五日……。進むよ」


 そう言って、ディジーは歩き出した。


「シェラ! ティリア! 行くよ!」


 ディジーはそう話しながら、父親の首を抱きかかえ泣き喚く人々の横を通り、足を動かす。

 その言葉で、シェラも、ティリアも動き出した。


 三人の背中を見ながら、僕も歩き出す。

 まだ、何も終わっていない。

 理由はそれぞれ違う、志もそれぞれだ。

 だが……足の向く方角と、目的は不思議と同じだった。

七夕ですね!

私が願うとしたら、書籍化したい! だと思います。

前作の恋愛物なんかも、映像化してくれぇぇ!と思ったりもします。

頑張りますよ、これからも。


第八章はこれにて終わりになります。

次回からは九章に。

長い物語になりますが、是非とも一緒に完結まで見守って頂けると嬉しいです。


ブクマ、感想、レビューなんかも、軽率にお願いします。

私が泣いて喜びます。

飼っている犬と猫も喜びます。

お願いじまず( ; ; )

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