表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第八章:欺瞞

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/146

Episode:23 衝撃と雷撃

 雷の光にも似た騎士達が、一斉に戦場を駆け抜ける。

 似ているのは見た目だけで、触ることのできる物体な以上、速度の上限は決まっている様なものだった。

 だが、そこら辺の黒曜級と比べると、一つの動作が小さく速い金騎士に、バルドは手を焼いていた。


「っクソ!」


 両の手に持った双斧を振るい、バルドは歯を食いしばる。

 召喚魔術で顕現した金騎士は素早く、彼の攻撃は一つも当たらない。


「なんだコイツら!」


 叫ぶバルド。

 金騎士に攻撃は当たらないが、速度を重視した金騎士の攻撃は、致命傷と呼ぶには浅すぎる傷を作るだけで精一杯だった。


「っ! アイツら、回避に力を注いでるせいで決定打にならない!」


 ディジーが走りながら魔剣を振るう。


 冷気が形を成し、氷槍がバルド目掛け伸びた。

 それを目視したバルドは、焦るそぶりなどは一切なく、ただニヤリと笑った。


「あんがとよ!」


 バルドはそう叫びながら上体を逸らし、氷槍を回避して側面を斧で叩いた。

 気の抜けた打撃音の直後、甲高い音が森に響く。

 そして、氷槍の向かいにいた金騎士の体が激しく飛び、森を突き抜けた。


 木々を降り、土を抉る音が響き、土煙が舞う。

 

「やっと自由だぁ!」


 バルドが地面を斧で叩くと、即座にヒビ割れ、大地が盛り上がる。

 悪くなった足場で姿勢が崩れた金騎士の体を斧で叩くと、隕石でも落ちたような勢いで地面に打ち付けられ、そのまま地面を転がった。


「っち! 発動条件がわからない!」


 ディジーは歯を食いしばりながらバルドを見る。

 バルドは、ニヤリと笑いながら僕たちを見下ろした。


「ルイン!」


ディア(炎よ)フィルト(射出せよ)


 ディジーの声と共に、僕は詠唱を開始し、すぐに火球を放った。

 バルドはニヤリと笑い、足元にある小石を蹴り上げ、それを斧で叩く。


 フィィィン


 甲高い音が響き、突風が流れた。


 バルドの眼前に迫った火球は、まるで透明な壁に押し返されるように僕に迫る。

 頭によぎったのは、自身の魔術で身を焼く、僕の姿だった。


「ルイン、避けるんだよ!」


「――っ!」


 ディジーの言葉で、僕は引き戻される。

 右手のひらを前に向け、ほぼ無意識に、そして早口で呟いた。


エルナ(風よ)フィルト(射出せよ)


 右手から発動した風魔術が僕の体を浮かせ、後方に弾き飛ばす。

 僕に迫る不可視の衝撃波は、当たることはなく地面を陥没させた。


「大丈夫か!? ルイン!?」


 ディジーの声が響く。

 僕はゆっくりと立ち上がり、バルドを睨んだ。


「――問題ないです」


 そう言いながら、頭をゆっくりと上げていく。

 世界の中心は、魔術だ。

 魔剣じゃない。


「ジャンジャン行くぜ!」


 バルドはニヤリと笑いながら小石を投げ、それを目掛けて斧を振るう。


 ガチンッ


 鈍い音が響いた。


「ぐぁぁぁぁぁ……。まじ、冒険者ってウゼェ……」


 バルドの斧を止めたのは、シェラだった。

 気づかなかった。

 二百を超える体躯、百七十を超える大曲剣を持ちながら、この場にいる誰よりも速く、気づかれずに動いた。


「っな!」


「シェラ! 気をつけて!」


 僕の声にシェラはニヤリと笑う。

 そして、あの甲高い音が響いた。

 大曲剣で受け止めても、衝撃波は発生する。

 生身の生物がそれを受けたら、どうなるかなどは想像に容易い。


 だが、発生した衝撃波は弱く、シェラの足を動かすことは出来なかった。


「なんだ? 魔剣持ち……。仲間がいねぇと、冒険者一人殺せねぇのか?」


 シェラは確かにそう呟いた。

 バルドは目を見開き、歯を食いしばる。


「ティリア、今!」


 シェラの叫び声と共に、ティリアは高く跳躍し、バルドを挟撃するかのように姿を現した。

 桃色の尻尾が揺れ、軽い身体が太陽の光に照らされる。

 ティリアの魔剣は毒と腐敗。

 傷がつけば殺せる一斬必殺の魔剣だ。


「っち!」


 武器を止めたシェラ、確実に背後を取ったティリア。

 勝ち筋が見えた。

 いや、むしろ勝った。完全にそう感じた。

 だが、仲間がいなくなった戦場で、自由に動けるのだとしたら、きっとその前提は覆る。


 バルドは刃を下に向け、地面を強く、そして深く叩く。


「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 雄叫びにも似た叫び声と共に地面に刃が沈み、甲高い音が響いた。


「予定変更だ……商品なんざ知るか、ぶっ殺してやる」


 バルドがそう呟いた直後、シェラの足元がさらに盛り上がり、僕たちの足元までヒビが入る。


 カチンッ


 目線を下げていた僕たちに見ろというように、さらに音が鳴り響く。

 直後、甲高い音が響き、盛り上がった地面から爆発して瓦礫を巻き上げるように、地面が破壊された。


「ルイン! 離れろ!」


 シェラの声が響いた。

 地面の盛り上がりは、内側から出ようとする衝撃波が連鎖的に発生する物。

 それは、地面を砕き、轟音を響かせながら津波のように迫っていた。


 巻き上げられた大量の瓦礫は、僕の視界を覆い、空を隠す。


 ――もう間に合わない。


 迫る瓦礫に、僕は覚悟を決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ