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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第八章:欺瞞

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Episode:17 どうしますか?

 ティリアは僕を睨む。


「何もんなんだニャ」


 ティリアはそう話しながら、僕の体を見つめた。

 足先から頭まで、そして頭から足先まで、隠すでもなく、分かりやすく観察していた。


「なんで戦えるニャ」


「あなたには何回も殺されましたから」


 ティリアの言葉に、僕はそう答えた。

 足から離した手を握り直し、力を抜く。

 その光景を見ながら、ティリアは足首を撫でていた。


「そんな記憶はニャい」


「記憶以前に、死んでいたらここにいないって言いますよ、普通は」


 僕のその言葉に、ティリアは視線を逸らす。

 照れているのだろうか?

 獣人(アニマ)は全身に毛が生えている。

 顔が赤くなっても、毛皮のせいでよくわからなかった。


「で、どうしますか?」


 僕がそう話すと、ティリアは首を傾げた。

 いまだ瞳に残る警戒心、それでも話を聞く気になったのは大きな一歩と言えるだろう。


「仲間になるか、どうか。です」


 僕の言葉に、ティリアは僕の背後に視線を向けた。

 僕もそれに釣られるように振り向くと、不機嫌そうに頭を掻くシェラと、腕を組みながら銀髪を触っているディジーが視界に入った。


「アイツらには確認しなくていいのかニャ?」


 ティリアは確かにそう話した。

 出会い頭に短剣を振るう冒険者だったが、仲間の意見を聞く冷静さは持ち合わせているらしい、ますます冒険者狩りをしている理由が気になった。


「大丈夫です。あとで頭を下げます。再配置を止めるために集まってる」


 僕の言葉に、ティリアは首を傾げた。


「再配置って、ニャに?」


 僕はその言葉に、少し考える。

 脳内で情報を整理し、工夫して話した方が伝わりやすいと思ったからだ。


「世界は同じ七日間を繰り返していると言ったら、信じますか?」


 僕の言葉に、ティリアはさらに首を傾げた。

 すでに直角に近い角度だ、尻尾がユラユラと揺れ、頭を使っていることがわかる。


「ティーちゃんは、繰り返してる?」


「あなただけじゃなく、世界丸ごと、すべてです」


 僕がそう話すと、ティリアの眉が分かりやすく歪んだ。


「少し難しい、ですかね」


 ティリアは刻を読めない。

 一般教養がおそらくないのだろう、よく冒険者になれたな。


「――原因はニャにか分かっているのかニャ」


 ティリアは思考を放棄していた。

 理解が追いつかない事象に関しては、理解できない部分は無かったことにしてしまう性格らしい。

 確かに、何度周回を重ねても、ティリアの切っ先にブレも迷いも無かった。

 決断がブレることはあっても、決断に行き着くまでの過程は、ティリアにとっては迷う要素にはならないのだろう。


「まだ分かりません」


 僕がそう話すと、シェラの声が背後から響く。


「東の果てに洞窟があるらしい。そこにいけば、何かわかるかもしれねぇ」


「それも推測に過ぎない……。確定要素とはまた違うでしょ」


 シェラの言葉に、ディジーがため息を漏らしながら呟いた。

 ディジーの返答に、シェラは少し眉間に皺を寄せる。


「あのなぁ」


「事実でしょ。取り敢えずついては来てみたけど、ルインが嘘をついているようには見えないってだけで、話した情報そのものを全て信じているわけじゃないの」


 ディジーのもっともな返答に、場は静まり返る。


「まぁ、でも……昼間の嵐鳥(バリス)の時の指示は適切で的確。さっきのティ……リア? との戦いだって圧倒してた。冒険者でもない子供が、土壇場で黒曜級を圧倒するなんて、そんな楽な世界じゃないのは理解しているつもりよ」


 ディジーはそう話しながらため息を漏らし、近くの樹木に背を預ける。

 シェラはそんなディジーを見つめて頭を掻いた。


「素直じゃねぇな。論理的に話して、理論的に語ったとしても、眼前の異常は変わらねぇぞ」


 そう話したシェラを、ディジーは睨んだ。


「雰囲気は悪いけど、悪い人たちじゃありません」


 僕がティリアに向き直ってそう話すと、ティリアは目を細めた。


「そうは見えないニャ」


 ティリアの言葉に、僕は肩をすくめる。

 そして、僕は立ち上がった。


「で、どうしますか?」


 僕がそう話すと、ティリアはシェラとディジーを見つめる。


「見ればわかる。強い……強いニャ。あんな冒険者を、どうやって仲間に?」


 僕に向かって、ティリアはそう投げかけた。

 その問いに、僕は正直に答えた。


蜥蜴人(リザードマン)のシェラは親友のため」


 僕がそう話すとシェラは右手をヒラヒラと翻した。


褐樹人(ダークエルフ)のディジーは知識のため」


 僕の言葉に、ディジは目を背ける。

 ティリアはそれを聞いて、僕を見つめた。


「僕は、大切な人のために」


 その言葉を聞いて、ティリアは目を見開いた。

 桃色の瞳が潤み、僕を見つめる。


「大切な……人?」


「はい。母親と、もう一人……どうしても守りたい人がいるんです」


 そう話すと、ティリアは喉を鳴らした。

 

「か…………く」


「はい?」


「家族……の為でも、見返りが家族でも、ティーちゃんはそこに入って問題ニャい?」


 目を潤ませながらそう話すティリアに、僕は頷いた。


「はい。何があったかは後日聞きます。話したくないのであれば話さなくて構いません」


 鼻を啜る音と共に、ティリアは僕を見つめる。


「役に立つニャ。必ず」


「待ってました」


 ティリアの決断に僕はそう言って右手を差し出す。

 ティリアは、差し出された手をしっかりと掴んだ。

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