Episode:16 言わなかったこと
――ルイン
僕はゆっくりとシェラを見つめる。
「ルイン、なんで言わなかった。今何回目だ」
シェラは、僕を見ながらそう話した。
ディジーは状況が飲み込めず、視線を動かしながら僕とシェラを交互に見る。
「な、なんの話だい」
「ルインは、森に来るのが初めてじゃねぇ……。こいつ、隠してやがった」
「な、なんのために……」
シェラとディジーの話を遮るように、僕はため息を漏らす。
その光景を、ティリアはただ眉を歪めたまま見つめていた。
「この方を引き入れたかった。獣人の略奪者。それを仲間にしたいと言ったら、シェラは許してくれますか?」
僕がそう話すと、ティリアもシェラも眉をさらに歪める。
「オメェ、何言ってるか分かってんのか?」
シェラは僕を睨む。
「略奪者ってことは、冒険者を殺して生計を立ててるゴミ溜めの連中だ。それをわかって、言ってんのか?」
シェラは声を低くして、そう呟いた。
僕はその言葉にティリアを見下ろす。
「知っていますよ。誰よりも……僕はこの人に、二桁以上殺されてる。この場にいる誰よりも、身体、心に刻まれています」
僕がそう答えると、シェラとディジーはティリアを見つめた。
「きっと、これが最後です」
そう言って、僕は彼女の短剣を蹴り、遠くにやる。
「ティリア・ファレット、世界は繰り返されています。冒険者でもない僕が、あなたのあの速度の攻撃を回避したのが証明です。再配置を止めるため、僕に協力してくれませんか?」
僕がそう話すと、ティリアは少し怯えた様子で僕を見つめる。
「な、何を言ってるニャ……。イ、イカれちまってんのかニャ」
ティリアがそう話すと、僕はため息を漏らした。
「まぁ、ええ。あなたに十数回と殺されて、イカれてるかもしれませんね」
僕はそう言いながらティリアを睨んだ。
「あなたを殺した時、短剣を奪って先に進んだ周回があったんです。でも、今の僕たちはその短剣を上手く扱えず、死ぬ羽目になった。だから、扱いが上手いあなたを引き入れたい」
僕がそう話すと、ティリアは歯を食いしばり、地面に手をついた。
その勢いで蹴りを放ったが、僕は軽く受け止め組み伏せる。
「ここまでも見てます」
「――っ!」
掴んだ足をあらぬ方向にゆっくりと圧力をかける。
「どうしますか? 仲間にならないなら、足を折ります。十数日は立てないでしょう、家族もきっと悲しむ」
僕がそう話すと、ティリアは歯を食いしばり、地面を強く叩いた。
「クソッタレ! そんな事も言うのかニャ! そんな脅し、効かニャい! ティーちゃんは、ちゃんと一人で生きるニャ!」
ティリアはそう叫んだ。
数回前、家族のことについて話したことがあった。
人質に取るためだったが、ここまで豹変したのは初めてだった。
懐中時計に入れられていた写真。
あれは、家族が生きていて、大切にしているか、すでに死んでいて、形見にしているものだと思っていたが、反応を見るに少しばかり違うような気がする。
断定ができるわけじゃない、だが、そんな感じがした。
「折るなら折れニャ!」
ティリアは僕を睨む。
その気迫に、僕は少しだけ力を緩めた。
「すいません。そんなに怒るとは……」
僕を睨むティリアは涙を浮かべる。
冒険者嫌いは、どこから来たのか。
家族を大切にする彼女は、何回繰り返しても、極悪非道な略奪者には見えなかった。




