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君に寄り添う六日間、世界が消える一日  作者: 鬼子
第八章:欺瞞

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Episode:5 意思

 校舎についた僕は、校内を歩き、目的の人物を探す。

 それは褐樹人(ダークエルフ)のディジーだった。

 遭遇する場所は、シェラもディジーも同じ。

 刻が少しだけ違くて、ディジーのほうが少しだけ早い。

 だから、僕は壁に寄りかかりながら、目的の人物が来るのを待った。


「――はぁ、まだかな」


 刻的には問題ない、だから、焦っているのだろう。

 僕自身が持つ焦りが、感覚的な刻を歪めている。

 感じとっている感覚が、今までと少しばかり違う。


 そして、軽やかな足音と共に、長い銀髪と漆黒の外套が視界の端に映った。

 僕はその背中を追いかけ、声をかける。


「すいません」


 僕の言葉に、ディジーは振り返り、僕の顔を見てから目を細めた。

 切れ長の紫色の瞳が僕を睨む。

 警戒の色は溢れ、口角が少しばかり上がっていた。


「なんだい? しょうね……ん」


 僕の顔をしっかりとみたディジーの顔は、目を見開き、警戒から恐怖にも似た表情を浮かべた。


「――アタシら知り合いかい? 子供に恨まれるような事をした覚えはないんだけど」


 ディジーは少し顔を引き攣らせ、そう呟いた。

 僕がどんな表情をしていたのかは分からないが、黒曜金級の顔を歪ませるほど異常だったのは、想像に難くない。


「興奮してんのかい? 深呼吸しな、死が間近にある以外で、そんなに瞳孔が開いてる人間を見るのは初めてだよ」


 そう言いながら、ディジーは外套の中から水袋を取り出し、僕に手渡す。

 僕は静かに受け取って、水袋の栓を抜いて一口飲み込んだ。


「……っはぁ。すいません、少し落ち着きました。場所を変えて、話しませんか?」


「あ、あぁ」


 僕は水袋をディジーに返しながら話す。

 以前の彼女なら、いや。

 前回の彼女なら、警戒してついてこなかっただろう。

 あっさりついてきた所を見ると、僕の中の何かが見えてるのか……。


「ここでいいです」


「ここって……ほんの少ししか歩いてないじゃないかい。階も変わらないし、廊下の真ん中付近から、端に移動しただけじゃないかい」


 僕の言葉に、ディジーはそう答えた。

 確かに間違っていない。

 だが、シェラが問題を起こした……いや、問題を解決した階でもある、ここから移動するほうが効率は悪い。

 それに、初めてディジーと出会った時も、この階だ。


「構いません。もう一人、蜥蜴人(リザードマン)を待っているんで。単刀直入に言います、仲間になってください」


 僕がそう話すと、ディジーは目を見開く。

 そして、鼻で笑うように話した。


「――っは。出会って一言二言しか話してないじゃないか、アンタに……ましてや子供なんかにアタシの何がわかるってんだい、アタシが冒険者かどうかもわかってないだろうに」


 ディジーは手をあげ、呆れたように首を振りながらそう話した。

 その顔を、僕はしっかりと見つめる。

 僕の表情をみたディジーは喉を鳴らし、ゆっくりと手を下ろした。


「ディジー・ミリアム」


 僕がそう呟くと、ディジーは目を見開く。


「な、なんでアタシの名前を……」


「黒曜金級の冒険者で、得意魔術は召喚。数多の魔具を外套の中に隠し、魔剣さえ保有している。魔剣の名前は確か……バシフィールの凍結の魔剣」


 僕がそう話すと、ディジーは一歩引き、外套に手を入れる。

 そして、歯を鳴らした。


「なんで、そんなことまで知っているんだい?

アンタは……敵なのかい」


「言ったじゃないですか、僕の……仲間になってくださいと――」


 僕が答えると、ディジーはさらに目を見開いた。

 話していたことが本当の確証がない、これだけの情報を知っているなら急襲もできた、なのに行わず、仲間になる打診をしている僕の言葉を、やっと理解したのだろう。


 直後、彼女の背後にもう一人の目的が現れるわ、

 騒々しくなった背後に、ディジーは振り返り、状況を把握しようと視線を巡らせる。


「やっときた」


 僕がそう呟くて、ディジーは一度僕をみて、再度騒がしい人混みに視線を向けて呟いた。


「――蜥蜴人」


 ディジーはそう呟いた。

 僕は驚いた様子のディジーを見て、ゆっくりと口を開いた。


「シェラ!」


 僕がそう叫んだ直後のことだ。

 人混みから、真っ直ぐに僕の元に歩いてくる。

 僕はシェラから一切目を逸らさず、彼の姿を視界に収め、重い足音をただ聞いていた。


「俺様を呼んだのはオメェか? あんちゃん」


「はい僕です」


 シェラはディジーを一瞥し、横を通り過ぎて僕の前に立つ。

 小さな僕を見下ろし、ニヤリと笑って牙を見せる。


「なんか用か? 子供に呼ばれるこたぁしてねぇ」


「エリクト」


 シェラが呟いた直後に、脈絡なく合言葉を話したが、彼の耳にはしっかり届いていたらしい。

 僕を見下ろし、威圧に満ちた表情が困惑に変わり、次第に落ち着きを取り戻す。

 直後、シェラは深呼吸をして、僕を見つめた。

 そして……。


「オメェ、名前は? それと……今何回目だ?」


 シェラは僕にそう話した。


「僕はルイン……。今は、何回目かはわかりません。まだ十回は多分ないかと」


「わかった」


 僕が答えると、シェラは頷く。

 前回、死ぬ前にシェラが話していた()()()()これには、どんな意味があるのだろう。


「あ、アンタらなんの話をしてんだい!」


 ディジーが焦ったように話す。

 その声色には、怯えに似た感情が含まれていた。


 そんなディジーを、僕とシェラは見つめる。

 そして一言、僕は呟いた。


「今から話します」


 僕のその声に、ディジーは喉を強く鳴らした。

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